第4話 嫉妬と覚悟

食堂に向かう渡り廊下ではるちゃんに声をかけられた。


「菜穂!お前、ピアノ弾くんだってな!」


「ねぇ、放課後一緒に練習しない?」


とても優しく可愛らしい声でそう聞いてきたのは、はるちゃんの彼女さん。

放課後、3人で音楽室に集まる約束をした。





「え?来られないの?」


授業が終わり、音楽室に行くとはるちゃんだけがいた。

彼女さんは来られなくなったとか…



私のピアノを目を瞑って聴いているはるちゃんに見惚れてしまう。

気持ちよさそうに聴いているのだ。

夕陽が差し込む落ち着いた空間を彼が現れ一瞬で冷え切った。



ビシャッ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯



勢いよく開いた扉。

そこに立っていたのは…



「み、水戸くん?」



怒った様子の水戸くんは無言で私の腕を掴み走り出す。



「え!?なにっ」



水戸くんがどうして?

なんで怖い顔して…



走った先は屋上。

この前の水戸くんとは違う。

走って上がった息を落ち着かせる。


「ど、どうしたんですか?」


水戸くんはキリっと睨みつけながらボソッと呟いたように口を開いた。


「あいつには、笑顔見せるのかよ」


笑顔?

あいつってのは、はるちゃんのことだろうか。


「私、笑ってないです…」


「は、無意識かよ。尚更ムカつく」


水戸くんはそう言い座り込んだ。

拗ねてる…

私も水戸くんの前に屈み込む。


「幼馴染です。私、卒業式に気持ち伝えるんです」


なぜだろう。

私もわからないが、水戸くんに話していた。


私の目を見て話を聞いてる水戸くん。


「片想い?」


「これが恋なのかとか私はよくわかりません。

でも、妹みたいって言われた時は悲しかったです」


「なんか悔しい…嫉妬する」


水戸くんは顔を赤くして口を隠すように押さえた。


…嫉妬?

こんな顔するんだ…と。

ぼーっと見つめていると私の頬を水戸くんの大きな手で覆われた。



「俺にも可能性あるよな?俺のことを信じてもらうように頑張る。だからさ…」


そう言って彼はまたこう言った。



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