第3話 本当の想い

「菜穂、音楽室行ってる?」


 あの昼休みの日から1ヶ月。

 音楽室に行く勇気がなく行けていない。


「あー、行ってない…」

「あれどうするのよ。伴奏、頼まれたでしょ?

 しかも、白井先輩の卒業式じゃん」


 そう、音楽室に行かなかったこの1ヶ月。

 先生が心配して声かけてくれた時にお願いされた。


『3年生の卒業の歌の伴奏』


 3年生には美咲と同様にずっとそばで支えてくれた人がいる。

 白井晴翔しらいはると

 私はずっとはるちゃんと呼んでいる。

 二つ上のはるちゃんはすごくカッコよくて私のヒーロー。

 環境が変わったあの頃から会話も減った。

 それでも私を気にかけてくれていた人。


 最後に気持ちを伝えたい。


『人を信じるな』その言葉が頭をよぎる…


 だが、『音楽で気持ちが伝わる』この言葉を信じてピアノに触れた。


「私、ピアノ弾く!ちゃんとはるちゃんを見送る!」


 美咲にそう宣言した。


「菜穂、変わったね。私嬉しいよ」


 私が前を向くようになり変わたと、嬉しそうに美咲は言った。







 久しぶりの音楽室。


 ⎯⎯ガラガラ⎯⎯⎯


 ピアノに触れて思う。

 やっぱりピアノっていい。

 すごく落ち着く…


「久しぶり…」


 私はピアノにそう呟く。

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