07 妻
〜「妻」選択編〜
「それで…シュウは?」
改めてシュウに問いただす。
「褒美ですか……」
褒美とか言われても……
やはりここは重要な、金と時間を選ぶべきか…
悩むなぁ…名誉とかもいいかもしれない…この世界の生活にも慣れてきたし奥さんもそろそろ欲しいな…
でも、ここはやっぱり…金か時間??
権力も欲しいな…けど、魔力とかも使ってみたいし…
いや…もうとりあえず、一番安牌な『お金』にしておくかな?
でもな…とりあえず、勇者は引退して…良い隠居生活をするなら奥さんはいたほうがいいよな…
シュウは『 妻 』を選んだ。
「妻?そんなものでいいのか?ほら、爵位とか、領土とか、そんなもんじゃなくて?」
「ええ、女性をお願いします」
「んん…そうか…お前らは皆、欲がないな…物をあげても、つまらんわい」
「…まあよい、魔王を倒し、褒美は…今週中に届けさせる。えっと…妻がほしい奴…貴様だ…」
スーワ3世はシュウを指差す。
「あ、えっと…シュウです。」
「シュウ、後でこっちに来い。希望の女を答えろ。もっとも、人妻だけはよしてくれよ…面倒なことになる。……ふぅ…よし、これで勇者団の役目も終わりだ。これまでの任務ご苦労だった。以上…解散っ!」
「はっ!」
4人の応答が重なった。
6年という月日はバラバラだった心すらも一つにまとめ上げる。
ハミらとは王城の玄関で別れた。
「シュウ。これまで、ありがとね…」
「シュウ、じゃあな。」
「シュウさん…ありがとうございました…」
仲間っていいなぁ…
大きな扉が音を立てて閉まった。
一人でトボトボと玉座の方へと向かう。
「他の仲間は帰ったか」
「ええ」
「そうか。仲間がいなくなるのは寂しくなるな」
「ご経験がおありで?」
「若い時に、少しな」
若い時に、ってこの人は今何歳なんだろうか?
顔からして60代半ばくらいかね?
「まぁいい…それで…?妻が欲しいんだったな?」
「ええ…できたら…平民の方が良いのですが…」
やっぱりこういうときは平民に限るな
貴族の娘とかだと、継承権の争いとか貴族のしきたりとかだるいもんな…
「ダメだ」
まさかの即答
まさか断られるとは…
「………」
なんでですかね??
あなたには平民の娘の良さがわからんのかね?
そう思いながら、恐る恐る聞いてみた。
「あの…なんででしょうか?」
「貴様に与える女は、我が娘と決まっているからだ!」
「は??」
「だから、貴様には我が娘を与えよう、ということだ!」
えぇ…
ありがた迷惑なんですけど…
「……わかりました」
「それで…頂戴する娘さんは何処に?」
「うむ…貴様のような、面白い武人には…第6王女『エルサ』をやろう」
なんだその、ネズミの映画に出てくる氷の女王の名前みたいな奴は…
「いや…第7王女の『アイナ』でも良いか…?」
「しかしな…第5王女の『アンジェリカ』も似合う気がするんだが…」
「……よし…決めたぞ、貴様には我が第9王女『アリシア』をやろう!!」
……なんか勝手に決められた…
王女『アリシア』さん…か…どんな人なんだろうか…
俯いてそんなことを思っていたら突然、
「アリシアっ!!来いっ!!」
城全体に響き渡る、スーワの大きな声。
しばらくして、足音が聞こえてきた。
「お父様!?このアリシアをお呼びですかっ!?」
アリシアという女性が入ってきた。いや、女子…か…??
見た目は15、6歳くらい、いわゆるJKと言われる部類に入るだろう。
長い茶髪が陽に反射して、美しい。
あ、こっち向いた。
思ってたよりも可愛いぞ…これ
「聞いてますかっ!?お父様!」
ん?お父様??
思わず顔を見上げる。
そこにはさっきと全く変わらない、「白髪が混じった茶髪に、豪華な王冠、ちょび髭、そしてなんか凄そうな衣服を身に纏う人物」がいた。
え、待って?この人何歳なの??60過ぎかと思っていたんだけど…
15、6の娘がいるのか??……あ、でも…あれか、妾とかそういうのがいるから関係ないのか…
「アリシア、貴女はこの男に嫁ぎなさい。」
うわ、ストレートに言ったぞ
「……わかった…あなた、名前は?」
アリシアはシュウに指を差した。
「シュウ…と言います」
知ってるかな…?勇者シュウですよ。魔王を倒した人ですよ。
「…シュウ??ってあの…魔王マーオリプスを倒した…勇者の…?」
あ、知ってた。勇者シュウの名って結構知れ渡ってるんだね。
「え…あ、はい。そうです」
アリシアの顔が見るからに赤くなってきた。
「えっと…不束者ですがこれからよろしくお願いします…」
目がソワソワしている。
「よろしく、アリシア」
と言ったら、アリシアは顔を隠しながら逃げてしまった。
「すまないな。アリシアは、勇者様の物語が大好きでな。それじゃあ、父の身からも…娘をよろしく頼むよ」
スーワは頭を下げた。
「……はい」
こちらも頭を下げる。
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