其之参:迷宮編
XIX.落ちた先はどこまでも下の階層だった
これまでのあらすじ
突如異世界に召喚された玆先逢兎。彼は召喚の際に能力を手に入れ、一人で森の中に放り出されたのだった。
そこで出会った熊獣人のイリ、奴隷商から奪い去ったルナ(仮名)と一緒に彷徨うことになる。
街に着いた三人は冒険者登録をした。その後森に行くと
その後、三人が迷宮に行くと・・・
最果ての迷宮-?階層
逢兎達は暗闇の中に飛ばされた。
「アイト兄ちゃんいる?」
イリは涙ぐんだ声で辺りを歩き回る。
「イリもルナも動くな。静かにしろ」
逢兎は二人の手を取ってそう言った。
「ルナ安心しろ。お前たちは絶対に死なせない。俺が二人を守ってやる」
震えるルナの手を取った逢兎はそう言った。
「でも、こんなの逢兎.さん一人じゃ……」
「大丈夫だ。俺は殺せないんだから」
逢兎は二人から手を放して前に歩き出した。
「ここどこか教えてくれたりする?」
逢兎は目の前にいる謎の者に問いかける。
「ウ、ウウ、、ウウウ、、、ココハ、、、セ、、ン、、、」
そう言うと闇の中でもなお暗い靄を体から噴出し逢兎達を飲み込もうとした。
「
逢兎はイリとルナの周りに壁を貼り、自分は靄の中をゆっくりと進んで行く。
「この、靄、動き、にくい、んだよ。…っさと、消えろ…。…つか、消せーーーー!!!」
逢兎はそう言いながら靄を出しているものに触れた。
「触れられたら、こっちのもんだ。さっそと消えろ!『
逢兎の魔力と靄がせめぎあう。着実に靄は増えなくなってきているが、それでもまだ出てきている。逢兎は力を振り絞り、さらに手を突き出す。
「うーーぅおーーーー! くたばれー!」
逢兎は靄を出しているものを押し倒した。靄が出なくなり、少しずつではあるが視界が開けてきた。
ルナが光を出すが、まだ何も見えてこない。
「ここは、一体?」
突然、イリでもルナでもない少女の声がした。当然だが逢兎が変な声を出しているわけでもない。声は逢兎の真下から聞こえてくる。
「てか、重いぞ。誰だ!
先ほどと同じ声がする。
逢兎は自分の体の下に紫色の髪をして、白い片角の少女がいることに気が付いた。気が付いた瞬間、イリとルナが逢兎を見つけた。
「ア、アアアアイト⁉ な、何やってんでしゅかーーーー⁉⁉⁉」
ルナは少し噛みながらも大声を上げた。
「貴様さっさとどけ。でなければ消し飛ばすぞ」
片角の少女がそう言うと、逢兎は慌てて立ち上がった。
「あ~、ごめん。大丈夫? 怪我とかしてない? どこから来たの? それより君冒険者なの?」
逢兎は片角の少女に手を差し伸べながらも質問をした。質問をしただけなのに自分の脳をショートさせかけていた。
「アイト兄ちゃん説明して。何なのそのこ?」
いつもと変わらないイリの声なのに、どこか威圧感を感じるようなきがする。
「知らないよ。なんか気付いたら俺の下にいたんだって。嘘みたいに聞こえるかもだけどホントで、それは何でかって言うと、俺がこの世界で知ってるのはイリとルナだけなわけで、いや、ギルドの人含めたらもうちょっといるかもだけど、こんな魔族っこ俺は何も知らないわけで......」
「五月蠅い!」
片角の少女が逢兎の早口長台詞を断ち切った。
「どうやら
逢兎はものすごい勢いで片角の少女の方を見た。
「アイト兄ちゃん、僕は今すごく冷静だと思うんだ。だから、そのこ
イリが指をポキポキ鳴らしながら歩いて来る。逢兎は片角の少女とイリの間に立った。
「待ってよ。俺さっきも言ったじゃん。こんな子見たことないんだって。俺の奴隷だっていうのも何かの勘違い名じゃないかな?」
逢兎がイリをなだめるようにそう言うと、後ろから片角の少女が口を開いた。
「勘違いなんぞではない。これを見よ。これこそ我がその
そう言いながら片角の少女は左胸を出した。確かにそこには、イリの手の甲にあるある魔法陣と似たような文様があった。
逢兎は、片角少女が見せてすぐに隠した。
「今ポロリとか誰も期待してないから。ポロリしてなかったけどポロリしてもおかしくなさそうだったから!」
逢兎は片角の少女に顔を近づけ、イリに聞こえないほどの声で言った。
「なんじゃ。
片角の少女は膨らんですらない胸を出そうとするが、逢兎がその手を止めて、自分が羽織っていたローブを強引に着せた。
「ロリがそんなことすんじゃないよ! 本当に心臓に悪いからやめて!」
「なんじゃ、やっぱりデカい方が良いのか」
逢兎の言葉に片角少女は残念そうにつぶやいた。
「いや、そう言う事じゃなくて......」
「アイト兄ちゃん?」
逢兎が何か弁明しようとすると、イリが声をかけてくる。逢兎は恐る恐る振り返る。
「説明、していただけますか?」
今度はルナが言った。二人とも満面の笑みだ。笑みの向こうに恐怖を感じる。逢兎は何も言われていないのにその場に正座した。
「ではアイトさん。この娘は一体何者なのでしょうか?」
ルナが逢兎を見下しながらそう聞く。
「初めましての人の紹介とかできるわけないじゃん」
逢兎は正座したまま身を乗り出して答えた。
「
片角の少女、リバイアサンが逢兎の後ろから答えた。
「え、管理ってことは迷宮王? もうラスボス戦なの⁉ でもおかしいよ? 150より下は誰も行ってないんでしょ? てか、俺ら1階にチップ置いてきたよね? ここって何階層なの?」
「1000階層、端的に言えば最下層じゃ」
リバイアサンが答えた。
「チップとやらが何なのかは知らんが、この間、暇潰しに迷宮を改装しようと思ったのじゃが、少し触ったらものすごい勢いで小石が3つほど降ってきおって辞めたぞ」
そのリバイアサンが小石だと思っていたものが逢兎達三人のチップだったのだ。
「あれ? そういえば、リグローは俺たちが来たとき何処に居たの?」
逢兎は話を聞くだけ聞いて次の質問を投げかけた。
「リグローって誰じゃ?」
リバイアサンが聞き返す。
「え、名前長いから君リグローね。嫌でも俺はそう呼ぶから」
「《わっぱ》が
逢兎は少し前のことを真剣に思い出す。
「あー、俺が触りに言ったやつ? あれ? じゃあ君死んでるの? 幽霊? お化け? 妖怪? まさか、ゾンビ?」
「どれも違うわ!」
リグローは逢兎にげんこつをくらわした。
「じゃあ何なのさ? あれで死なないやつ見たことないんだけど?」
逢兎は殴られた頭を押さえながら聞いた。
「
逢兎は目が点になっていた。逢兎の脳みその情報処理の限界値を超えた情報量を一度に詰め込まれショートしたのだ。
「えっと、つまり、死ななかったら奴隷になるのね。うん、わかったよ」
「違うぞ」
逢兎のバカな整理をリグローは一蹴した。
「奴隷ではない。傘下に加わると言ったんじゃ。間違えるでないぞ」
召喚された世界はどこまでも理不尽だった 伍煉龍 @gorenryuu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。召喚された世界はどこまでも理不尽だったの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます