VIII.異世界の人間は危険なにおいがする
翌日から逢兎達は草原を突き進んでいた。森に居たときはゴブリンが居たが、草原だとスライムが出てくるようになった。ゴブリンよりも楽に倒せるので、三人は問題なく進む。食事は、森の中でとっていたものの残りばかりだ。場所は変わったのに食事のメニューはだんだん雑になっている。
「アイト兄ちゃん、他に食べ物無いの?」
「ないよ。見てたでしょ」
「も~、飽きたよ」
イリはキノコを
逢兎達は翌日も、そのまた翌日も、草原を進んでいた。逢兎が戻り道を行こうとしたのは、毎朝の事だった。
「あれ、街じゃね?」
「本当ですね」
「ここはどの種族がいるん…だ…」
イリの歯切れが悪い。街にいたのは人間だった。イリとルナの足が止まる。
「二人とも行こうよ。人間の街だよ」
「に、人間、、、」
「アイトさんも、人間、なんですよね?」
二人の様子がさっきまでと明らかに違う。
「そうだよ? なんで二人とも
「ち、違うよ」
歯切れが悪いが、逢兎は気にせずに周りを見渡してから、街の方へ歩き出した。ルナとイリは逢兎の背中に文字通りに引っ付いて、付いて行った。
「歩き
「そんなことないよ」
「そんなことないです。気にしちゃ負けです」
「絶対わざとだよね? 分かってるよね? もうすぐ着くんだよ。周りから変な目で見られるよ。いいの?」
「気にしたら駄目です」
「絶対離れないよ!」
二人がどんどん強く引っ付くので逢兎の動きがだんだんと遅くなっている。
ようやく街に着いた。周りからの視線がかなりあるが、逢兎は周りを全く見ることなく歩いている。
「おい、そこのガキ」
大柄な男を筆頭に五人組が、三人の前に立ちはだかった。
「おじさん何か用?」
「お前の後ろにいるガキ、人間じゃねぇよな。何でここに連れてきた」
「仲間だから? おじさんの後ろにいる人と似たようなもんだよ」
「こいつ裏切り者なんじゃない? 異種と共闘なんかしちゃってるし」
男の後ろに立っている女が言った。
「人類の掟に
「掟とか知らないんだけど? この世界の人間は良くないの? 悪者だったら全員殺すよ」
「お前みたいなガキが俺らAランク冒険者に勝てるわけねぇだろ」
男は大きな剣を構えた。逢兎も杖を突きだした。
「もっとファンタジー見るまで死なないよ」
「意味わかんねぇこと言ってんじゃねぇよ」
男が剣を振り被ってきた。
「遅いよ。それが最速?」
逢兎は男を蹴り返した。
コロ・タカ 人間 大剣使い
称号:Aランク冒険者
スキル:剛力
魔法:大地魔法A 新緑魔法C
耐性:物理攻撃耐性A 魔法攻撃耐性A
ヒヨノ・ココ 人間 魔術師
称号:Aランク冒険者
スキル:高速移動B 跳躍強化B 身体強化D
魔法:属性魔法A 回復魔法A 強化魔法B
耐性:間接攻撃耐性B 貫通攻撃耐性D
ロノン・カノン 人間 侍
称号:Aランク冒険者 大将
スキル:
魔法:加護
耐性:物理攻撃耐性A 魔法攻撃耐性A 精神攻撃耐性C
リシェウス・ロンド 人間
称号:Aランク冒険者 忍者
スキル:分身 高速移動A 跳躍強化A
魔法:
耐性:
アーシュ・モンドウ 人間 双剣士
称号:Aランク冒険者 Dランク商人
スキル:高速移動B 跳躍強化B 身体強化D 解析鑑定感知S
魔法:火炎魔法A-
耐性:物理攻撃耐性C 直接攻撃耐性A
逢兎は五人まとめて鑑定した。
「コロ、気を付けた方が良いよ。こいつ鑑定持ち。能力バレるよ」
「レア玉か。殺すには
アーシュの言葉にコロは呟いた。逢兎の顔が少しばかり曇った。
「二人とも下がって。下がり過ぎないで。こいつら強いよ。今の一撃かわしたと思ったのに
「掠ったって大丈夫なの⁉」
「回復しましょうか?」
逢兎の言葉に二人は驚きを隠せない。
確かに、逢兎の右手と左足から少しばかり血が出てきている。流血はさほどしていないが、
「大丈夫だって。『再生』するから」
逢兎の怪我は
「あいつ本当に人間なのか?」
「人間じゃないなら殺す。人間であっても殺す。興味ないね」
「うちのリーダは毛が逆立ってるみたいだね」
コロはかなり殺気立っている。
イリとルナは逢兎から大きく一歩分ほど下がった。イリは五人まとめて睨みつけている。
「ルナ、イリを連れて逃げて。絶対に戦わない事。会敵しても逃げて。あいつらめちゃ本気だから」
「は、はい」
ルナはイリの手を引っ張って街の外に走り去った。リシェウスが追いかけようとしたが、逢兎に止められた。
「ウゴクナ。殺したいなら死ぬ気で来い」
コロ達は動けなくなった。逢兎は言葉に魔力を込めて、強制力を生んだのだ。
「言霊使いか。だが、これくらい」
コロは無理やり体を動かした。しかし、ゴキゴキバキバキと全身の関節が割れている。
「『
ヒヨリはコロに回復魔法と強化魔法をかけた。コロの怪我は全て治り、瞬きの間に逢兎の目の前まで来た。
「『
「『
逢兎は平然とコロの斬撃を受け止める。コロも、コロの仲間も、それに、騒ぎを聞きつけた街の住民も驚きを隠せない。
「コロのAランク攻撃を片手で、魔術師が止めた?」「あり得るのかよ」「でも実際目の前で」「信じられないな」
街の住人がザワつきだす。逢兎は、軽く吹き飛ばされることにした。
「うわー」
完全に棒読みで言って真後ろに飛んで行った。ついでに、ヒヨノ達にかかっていた言霊も外れた。
「わざとじゃね?」「あそこでパワー負けする方が不自然だって」「あいつ何者なんだ?」
余計に騒ぎが大きくなりそうだ。
「止めてもダメ、飛ばされてもダメって、俺はどうするのが正解なの⁈」
逢兎は
「どうするも何も」「あそこまでするならな」
「自力を見せるのが正解なのか?」「いや、殺されるのが正解か?」「少なくともあそこで負けるのは間違いだった」
「
「「「「「知らない」」」」」
見ていた人全員が口を揃えて言った。
「ダマレ。騒ぎたいなら顎外すしかないよ」
逢兎はその場にいた街の人全員に言霊をぶつけた。
「言霊の反動が見受けられないね」
「確かにな。これだけの事しといて外傷無いのはバケモノだろ」
アーシュとロノンがこそこそと話している。
「バケモノじゃないんだけど? 見ての通りの人間だよ? 反動って、動きにくくってるやつの事?」
「お前、Sランク冒険者か?」
「Sランクも何も、冒険者じゃないよ」
「冒険者でもないやつがそんな力もってるはずねぇだろ」
「冒険者になれるならなるよ。
逢兎はここぞとばかりに聞いてみた。
「俺らに勝てたら教えてやるよ。その前にお前は死ぬがな」
「そうだね。俺って戦ったこと数回しかないもんな」
逢兎は上の空で考えながら言った。
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