訪 れ た 災 厄

 五頭引きの橇が、湖の氷上に差し掛かる。昼の内だというのに、日差しは夕暮れの光を帯びている。フィンルアルト国の冬――日の出は遅く、昼間は短かく、夜の闇は深い。

 今頃、ヘヴンリ邸では、私の誕生日を祝う晩餐の準備をしているだろう。誕生日だからと特別な行事がある訳ではない。贈り物も必要ない。いつもより、ちょっとだけご馳走で、家の者が集まって、楽しく食事をするだけ――それだけで幸せだ。あの暖かな雰囲気に包まれたい。面倒な行事を終わらせて、少しでも早く家に帰りたかった。

 ……その頃はもう真っ暗だろうな……。――ケス、怒ってたのかな……。

 箱橇のなかは、天井は低いが、ちょっとした貴賓室だ。小花模様の壁紙。金細工を施したランプ。座り心地の良い腰掛け。小さいながらもストーブが入り、外套も必要ない。

 窓から見えるのは、冬でも所々に深緑を残す森と、羽毛のようにふわふわと優しく降る雪。外をぼんやりと眺める私に、正面に座るシメオンが話し掛ける。

「ずっと黙ってるね。心、ここにあらず?」

「……申し訳ありません、殿下。考え事をしていました」

「二人の時ぐらい『殿下』はよして、幼馴染に戻ろうよ。敬語もいらないから」

 そう言いながら、詰襟の留め具と、下のシャツの第一ボタンを外した。

「ゴアのもとで護身術を学んで、そこで君と出会って、あれからもう十年だ。……長い付き合いだよね、僕たち」

 その頃のシメオンは、私よりも背が低く、ひ弱で、痩せっぽちで、男の子には見えなかった。そんな彼も、今では私の身長を余裕で追い越し、日々の鍛錬のせいか、すっかり逞しく男前になっている。が、中身は良くも悪くも変わっていない。人懐っこく、少々甘えん坊の、一つ――彼曰く、たった五ヶ月――年下のシメオンは、私のなかでは弟のような存在だ。

「いつもは感情を表に出さないくせに、こういう時はほんと、わかりやすいよね。――ケス置いてきたこと、気にしてるんだ?」

 言い当てられ、返答に困った。彼はしおらしい表情を浮かべ、私の機嫌をとろうとする。

「ケスにはちょっと、悪い事しちゃったな。でも、こんな事でもない限り、カナンを独り占めする機会ってなかなかないし……僕だって君の誕生日、祝ってあげたかったんだよ?」

「うん……ありがとう。祝ってくれる気持ちは嬉しいよ。でも……シメオン。こういうことは前もって言ってもらわないと困るよ。それなりの準備も必要だし――」

「教えたら、君に驚いてもらえないじゃない?」

 確かに。十分に驚かせてもらった。穏やかな誕生日が、こんなに騒がしくなろうとは――

「そうではなくて……〈装甲傀儡〉の件。やっぱり、口実なんだな」と、疑いの目を向ける。

「あ、それは本当だから。今、王都でね、〈装甲傀儡〉を、軍事転用する話が出ているんだ」

「……軍事転用……? 〈傀儡〉を?」

「今すぐ――って訳じゃないよ。そうだな……防衛の準備ってところかな」

「準備? まさか……他国で不穏な動きでもあるのか?」

 私の質問に、シメオンは大げさに首を横に振る。

「ない、ない。――ここは『陸の孤島』。『天然の砦』に守られてる――海側の岩礁と絶壁のルメラ海岸、そして、大陸側にはハルトル山脈――いくつかある山越えの路も、山を神と崇めるギガネス族が、侵入者を門前払いだ。彼らに物資を提供することで、持ちつ持たれつの関係を維持してる。そのおかげで、建国以来、侵略とは無縁だ。そうであっても――それらを破る国が、この先、現れないとは言い切れない」

 国外で密かに活動している調査団によれば、現在、フィンルアルト国以上の文明を築き上げている国は存在しない――国の外は、『前』の世界の中世にさえ到達していない――

「フィンルアルト国は小国だ。けれど、自国ですべてが賄えるから、他国との交流は必要ない。おかげで――『さいはての楽園』や『氷上の桃源郷』と呼ばれるくらいにまぼろし扱いされてる。とは言え、なんにも準備してなかったら困るよね、って話で……まあ、遠い未来――ずっと先の、子孫のために、ってとこかな?」

「防衛……ほんとに、それだけ……?」

「もちろん。こちらから仕掛ける、なんてことは絶対にないから。そんなことしたらリトイス・エスキに怒られちゃうよ。彼は争いを好まないから。カナンも争いごとは嫌いだものね。やっぱり……〈神の末裔〉だからかな?」

 私も、その『あかし』とされるものは保持している。けれど――

「……それは、私には当てはまらないよ」

「また、そんなこと言って……。カナン、もういい加減――」

 橇が止まった。別邸まではまだ距離がある。前方の小窓が開き、馭者が声掛けする。

「シメオン殿下。今、最前列から伝令が――湖畔で〈傀儡〉が〈外獣〉放逐ほうちくの任にあたっているようで……少し様子を見る、とのことです」

「近いの?」

「いえ、距離はありますが、念のため。今しばらくお待ち頂いて――」

「そう。予定より遅れてしまうな。でも……そういうことなら仕方ないよね。帰りは遅くなりそうだし――今日はこのまま泊まっていけばいいよ。ね?」

 明らかに上機嫌なシメオンとは裏腹に、今日中には帰れない方へ傾きつつある現状に、小さくため息をついた――と、再び小窓が開く。馭者の声は先ほどと違い、大きな戸惑いがある。

「なにかあったようです……! 先頭が騒がしい――賊かもしれません」

「賊?」――あの美麗な橇馬を見れば、王室の橇だということは子供でもわかる。それがわかっての襲撃? 愚行だ。そんなことはお構いなしの、相当な目的でもあるのか?

 腰掛けに膝を着き、天窓を開けた。頭を半分だけ外に出し、前方の様子をうかがう。空はもう、薄紫色に染まっていた。

 先頭――付き人や侍女が乗る橇の辺り。多数の人影が小さく見え、後尾も同様に騒がしい。賊の足を留めてはいるが、不意をつかれたせいか、警備隊がやや押され気味だ。

「女を捜せ!」――「腕輪じゃねぇ、目だ! 目を見て確認しろ!」――「おい! この橇には乗ってねぇぞ!」

 男たちの、仲間を急かす怒鳴り声が、冬の澄んだ空気を突き抜け、こちらにまで届いた。

 女。腕輪ではない、目で。――目が身分証代りとなる人間は限られる。間違いない。あいつらの目的は――私だ。

 一刻も早く、ここから離れなければ――真っ先にそう思った。このままとどまり、王族にまで被害が及べば、その責めを負うのは私だけでは済まない。きっと、祖父じじ様にも――

「……? 〈鳩〉を飛ばした様子がない。外に出て状況を把握する。シメオンはここにいて」

「待って――僕も外に――」

「……いえ、殿下。ご自分のお立場を考えて――とにかく救援を……私が〈鳩〉を飛ばします。ここでお待ちください」と、彼に告げ、すぐに灯りを消した。

 橇を下りると、剣を手にした王都警備隊が三人、前列から駆けつけていた。聞けば案の定、賊の対応に気を取られ、〈鳩〉はまだ飛ばしていないと言う。

「賊は私を探しています。〈能力者〉の誘拐が目的でしょう。私は単独でここから離れます。おとりになり、賊を引き離します」

「おとりって……貴女一人で? 無茶です! 何を馬鹿なこと――」

「ここには王位継承者、その婚約者もいらっしゃる。この国のためにも、万に一つのことがあっては……。王族の方々と私、天秤に乗せて、傾くのがどちらか、おわかりのはずです」

 彼らは私の言葉に納得し、一人が護衛を申し出てくれたが――王族を守る者の手で守られる訳にもいかない――いや、そうじゃない――誰でもない。私が『守って欲しい』と望んでいる手は、ひとりだけだ。それは――

「いえ、皆さんはシメオン殿下をお願いします。――馭者さん、橇馬を一頭お借りします。賊の目的は私のようです。ここから離れれば、やつらも離れるでしょう。〈鳩〉はお持ちですか?」

「……えっ、は、はい……!」

 馭者は腰からぶら下げていた革袋から、雫のような形をした手のひらほどの硝子板――〈鳩〉を抜き取ると、私に差し出した。

 〈鳩〉の表面をしばらく指で抑えると明るくなり、項目が表示された。『第一級非常事態』――そこから、よもや使うことはないと思っていた『交戦中』を選択する。上部に向かって勢いよく指を滑らすと、鋭角部分から青白い光の玉が飛び出した。

 玉は上空に留まり、現在位置を記録している――ルドフィス区の起点はヴィルランファ邸に固定してある――そして、徐々に鳩の形を成すと、光の尾を引き、羽撃はばたいていった。

 相互登録してある〈鳩〉に届けば、光の紙に姿を変え、伝言を表示する――この国の新しい通信手段――これも私が関わった〈想像物〉だ。

「もうしばらく辛抱を。〈鳩〉は邸宅に届き次第、折り返し、救援隊を案内して来ます」

 〈鳩〉を馭者に戻すと、橇の引棒から橇馬を手早く外し、革具を鐙代わりにして股がった。鞍がなく乗りづらいが、そんなことは言ってられない。

「次はそれで〈閃光弾〉を上げて下さい。最大出力で――やり方、わかりますか?」

「え、ええ。でも、なんで……」

「私の姿を見せるためです。やつらが気づいたら、走ります」

 橇の列から外れ、手綱を握り直し、馬上で呼吸を整える。自分でも『馬鹿なことをしている』という自覚は十分にあるが、もう後戻りはできない。

「よろしいですか! あ、上げます!」

 馭者が〈鳩〉を掲げ、表面を親指で、とん、と叩くと〈閃光弾〉が上がり、辺りは昼間のような明るさになった。光に驚いたのか、一瞬、静かになった。私はそれを狙っていた。首に掛かる〈お守り〉を、服の上から強く握り、腹の奥底から声を出した。

「王族に手を出すな! お前らが探しているのは私か! 私がカナン・ヘヴンリだ!」

 あれだけの大声をよく出せたものだ。足は震えていた。賊が「誰だ、お前」という反応を見せてはくれないかと切に願ったが、返ってきたのは「いたぞ!」という男の声だった。

 その声を合図に、橇馬の腹を蹴った。私の名を呼ぶシメオンの声を聞いたが、そちらには目を向けなかった。冬仕様の蹄鉄が氷を噛み、橇馬は湖岸に向かって駆け出した。

 上着の長い裾がひるがえり、腰回りや襟元から冷たい空気が入り込む。外套と手袋を持ち出せなかったのが痛い。

 振り向き、賊の様子をうかがう。私と同じように、橇馬に乗り、追いかけて来る。一頭目に一人、二頭目に二人が乗り、あとに残った賊は、橇の列から引き始めた。

 ……よかった。やつら離れていく。早くケスに知らせないと――

 腰に手を回し〈鳩〉を探った。その手が空振りする。私は「あっ」と声を上げた。

 ……しまった! タルバの鞍に掛けっぱなしだ……ああ、もう!

 タルバを――ケスを置いていけと言った執事の満足げな顔が頭に浮かび、「あの、くそ執事……!」と、悪態が口をついて出た。

 ……奥の手を使うしかないな。

 頭のなかの記憶領域から、慌てて地図を引っ張り出し、湖岸の形と照らし合わせた。現在の状況、逃げ込む森の大まかな位置、どの道筋で逃げるのかを思い描き、それらを右の人差し指に集中させた。指先には先ほどの〈鳩〉とは違う色の光が灯り、次第に丸く膨らんでいく。軽い目眩を憶えながら、腕を前方に振り投げた。

「飛べ……ケスを呼びに行け!」

 指先から放たれた光の玉は一気に速度を上げ、鳩の形を成しながら飛び去っていく。

 橇馬を急き立て、辿り着いた湖岸を駆け上がり、森に入ろうとしたその時、小さな光が視界に入り、目を凝らした。〈鳩〉の後ろ――足を正座のように畳み、湖の氷上を滑走する巨人の姿に、思わず声を上げた。

「〈装甲傀儡〉……!」

 対〈外獣〉機よりは小ぶりの白銀の機体――王族の護衛専用機だ。これまで祭典や式典でしか使われず、本来の目的で出動したのは初めてだ。

 ……〈鳩〉が届いたんだ! これであちらは問題ない。あとは私が逃げ切るだけだ……!

 ルドフィスの森は、〈装甲傀儡〉が活動し易いよう間伐や枝打ちをし、国が管理している。木々の間隔が広い分、丈は高く、幹も太い。

 橇馬を気に掛けながらも、わざと樹木のきわを走らせた。幹の陰に入り、追っ手からの距離を稼ぎたいのだが、うまくいかない。橇馬は怖がり、勝手に速度を落としてしまう。タルバのように息が合わず、焦りが募ってくる。

 いななきと共に男たちの叫び声と、どさどさと重い落下音が聞こえた。橇馬の背から振り落とされたのだろう。それを喜ぶ余裕はない。もう一頭の荒い鼻息が、徐々に近づいてくる。速度を上げろと、橇馬の脇腹を蹴ったが、どうやら余力はないようだ。

 行き当たりばったりの計画の甘さを呪った――万事休すだ。万が一のために、と、腰の短剣に手をかけた――突然、体が進行方向とは逆に引っ張られた。

 慌てて上体を起こそうとしたが、腹に力が入らない。落馬し、引き摺られた。上着の留め具は、下の方からいくつか弾き飛んだ。

 背中が軽くなった橇馬は足を止めることなく、走り去っていった。

「はは、捕まえたぞ! 手間の掛かるお嬢ちゃんだ! 立派なもんだ。偉様えらさまを守る為に、自らお出ましになるとはな。頭が下がるぜ!」

 馬上から粗野な男の声がする。私の上着の裾を握り締めたまま、橇馬から下りた。と、橇馬は途端に走り出し、暗い森の奥へと消えた。

「くそ! まあ、いい」

 男は裾を強く引く。上着が捲れ上がり、うまく体が動かせない。裾の長いヘヴンリ家の正装が仇となった。

「は……なせ!」

 思ったほどの声が出ない。きつく締まる残りの留め具をなんとか外して上着を脱ぎ、慌てて立ち上がると、橇馬に習い、森の奥に向かって駆け出した。

「あぁっ! 大人しくしてろ!」

 次に引っ張られたのは、腰よりも長い、ひとまとめに編んだ髪だ。混乱と緊張で、足にうまく力が入らず、その勢いのまま、私は尻からどすん、と倒れ込んだ。

 男は腰からぶら下げていた小さなカンテラを私の顔に近づけ、目を覗き込み、満足そうに笑った。眩しさに苛つき、カンテラを力任せに振り払うと、雪上を転がり、明かりが消えた。男はそれを見て舌打ちした。

「あんたの首一つでさ、結構な額の報酬がもらえるのよ。大人しくしてりゃ、楽に逝かせてやるからさぁ」――いつの間にか男の手には、短剣が握られている。

「……首? 私を……ここで殺すつもりか……?」……誘拐じゃないのか?

 治安の良いこの国にも、一定数の悪人はいる。こそ泥から、血生臭い凶悪犯まで。

 上流階級や商家の一族、そして――〈想像能力者〉は、誘拐目的のやからに出会う頻度が高い。特に〈想像師〉は希少性から、その標的にされやすく、身代金も高額だ。

 護身術を身につけ、移動には犬を使い、さらには〈守護者〉を雇うことで、誘拐は減少傾向にあるが、それを生業とする輩は消える気配がない。

 身代金が目的なら、捕まったとしても命まで取られることはない――そう高を括っていた私は、男の言動に焦った。

 私の死を願う者。心当たりは――ある。頭に浮かんだのは、たった一人だ。最近は思い出すこともなかった。この名前を口に出せば、祖父様は悲しむだろう。

「あんたを殺すこと、他の連中は知らないんだ。なんてったって〈神の末裔〉だ。言えばビビって、誰も手を貸さないだろ?」

「……首謀者は誰だ? わかってるのか? 〈能力者〉殺しは極刑だぞ……!」

「捕まれば、だろ? あんたのところから金を貰う訳じゃないからな。ここでシメて、首をもってけばそれで仕舞いだ。俺の顔が、あんたのがわにバレることはない。捕まらないさ」

 かろうじて視界は効くものの、夜に向かい、暗さは増していく一方だ。それでも、ニタリと笑う、気持ちの悪い口元がはっきりと見えた。

「まあ……どうせ殺しちゃうんならさぁ、ちょっとは俺も楽しんでもいいと思わない? なあ、お嬢ちゃん?」

 ざわ、と、鳥肌が立った。この瞬間まで、自分が女であることを考慮していなかった。そして自覚し、恐怖した。死よりもおぞましいことを、この男はしようとしている。

 逃げようと腰を浮かしたそばから、何度も髪を引っ張られ、転ばされた。慌てる私を見て、男は楽しんでいる。

『ふざけるな!』――大声で怒鳴りたかったが、声が出ない。護身術は身につけている。相手が一人なら、切り抜けられる――そんな自信は、とうに消し飛んでいた。

 髪を引く力が強くなり、尻が引きずられる。男は高揚した様子で、きょろきょろと辺りを見渡し始めた。

 ……この男をどうにかしないと……! ――私に、倒せるのか? 腰の短剣で? この震える体で……? どうしよう……どうすれば――

 ふいに、幼い頃に聞いた、ゴアさんの言葉が耳のなかで響いた。

『姫様は、倒すことを考えずとも良いのですよ。関節の皮一枚でいいのです。切れば、一瞬ですが、相手の戦意は落ち、動きも止まります。短い時間でいい。逃げる隙を作るのです』

 ……そうだ、とにかく、今は――逃げ切るだけでいい。

 血の気の引いた手で短剣を抜き、男が掴んで離さない髪を切った。男がその反動でよろけた瞬間、振り向き様に相手の膝を目掛けて、力任せに剣を振った。

「うぁっ!」

 男が悲鳴を上げ、しゃがみ込む。その隙に立ち上がり、駆け出す。目の端で、何かがきらりと光り、ざり、と、脇腹に妙な不快感を覚えた。それは知っている感覚だった。

 ――たすけて――ブ……ト、わたしを、たすけて――こわい! ――

 何かを思い出しそうになり、慌てて記憶の蓋を閉め直した。今は何も考えるな。とにかく森の奥へ。木の陰に身を隠して時間を稼げは、ケスは必ず、迎えに来てくれる。

 ……それまで、なんとか……ケス、早く……早く来て!

 なぜだろう。急に体が重くなった。無駄に力を使い過ぎたせいか? 息が切れる。脇腹が痛い。暗い森が、さらに暗く感じる。衣服が湿り、肌に張り付く――気持ちが悪い。

 何から逃げているのか、わからなくなった。駄目だ、足を止めるな!

 とにかく奥へ……陰へ! ――

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