第52話 レオの散歩

「そう言えば、最近暖かくなって来たので少し遠くまで散歩に行く様になったんです」

 レオが思い付いたことを話し出す。

「へぇ、どこまで行ったの?」

「川向こうの神社です」

「あら、そこって確か猫が集まる所じゃなかったかしら」

 ナナさんが記憶を手繰りながら言う。

「そうですよ。ご存知なんですね。あそこでは猫の集会があるんですよ。今度ナナさんも一緒に行きませんか?」

「遠慮しとくわ。私、群れるのは好きじゃ無いの」

「残念です」

 断られたレオは少し気恥ずかしそうにしている。

「へぇ、猫の集会場なんだ。どんな猫が来るの?」

「自分が行った時にいたのは、三毛猫からラグドールなんかも居ましたよ。家猫も沢山いて、どちらかと言えば家猫の方が多かったかも知れないです」

「へぇ、そうなんだ。野良猫が集会するのかと思ってたけど、違うんだ」

「暇してる家猫の集会だったんじゃない?」

「もしかして、猫の集会って野良猫と家猫でやる理由とか内容って変わって来るの?」

 コロの質問にレオは苦笑い気味に答える。

「そうかも知れないです。自分は今回初めてなのでよく分からないですけど…」

「考えても分からないや。ねえ、どんな話があったの?」

「内容は大概がどこ何処の家には五月蝿い犬がいるとか、どこそこの家猫は外に出てこないとか、明日は雨が降りそうだとか他愛も無い話ですよ」

「そうか。面白そうな話は無かったのかー。残念」

 コロの呟きにレオがニヤリと笑う。

「1つだけ有りましたよ。ただ、本当の話かは信憑性はあまり無いんですけどね」

「それでも聞きたいな」

 コロのきらきらした顔がレオに向けられる。

「これは集会場である神社に纏わる話なんですが…」

 そう言ってレオは話始めた。




『昔、野良猫が雨を避ける為に神社に避難したらしいんです。

雨に濡れて憂鬱な気分だった。すると、何故か次から次へと猫達が集まって来たんです。

不思議に思った最初の猫が話を聞くと、みな誰かに呼ばれた気がしたと答えたらしいです。そこで自分自身も思い返してみると、雨が降る前に何故か神社の方に来てたらしいんですよ。

怖くなった猫達は神社を覗くと、お狐様の像があって自分達を見ていると感じたらしいです。

そこから、あそこで集会するときは油揚げを絶対に持って行くんだそうです。

不思議なのはそれだけじゃ無くて、集会の日を決めて無いのになんでか猫達が集まるらしいですよ』



 レオは嬉しそうに尻尾を振っている。

「自分も何故あの日神社に行ったのか、不思議なんですよね〜。なーんとなく足が向かったとしか言いようがなくて」

「不思議な話だね。行ってみたいけど僕は行けないな〜」

 残念そうなコロの顔をレオが不思議そうに見る。

「何でですか?」

「あら?知らないの?お狐様は犬が嫌いなのよ。嫌いと言うより苦手なのかも知れないけどね」

 コロの代わりにナナさんが答える。

「そうなんですか?知らなかった」

「もしかしたら、お狐様が近所の話が知りたくてレオ達を呼んでるのかもね。そうだ。僕の話を今度してみてよ。もしかしたらお許しが出るかもしれないし」

「いいですよ。コロさんも呼ばれるといいですね」

 コロは大きく頷くと尻尾を左右に揺らし始めた。

 何と無くそんな未来もあるかもなとナナさんはぼんやりと考えていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る