第51話 春の一時

 今日は昨日の嵐が嘘の様に晴れていた。ただ風は結構強く吹いている。

 庭に出たコロとナナさんは心地よい風と日差しを浴びてのんびりと過ごしている。

「お久しぶりです」

 塀の上からレオの声が降って来る。見上げるとレオが和かに笑っている。

「やあ、レオ。久しぶりだね。元気だった?」

 コロは身体を起こして話しかける。

「ええ、炬燵の中にいたのでぬくぬくでした」

「まだ、炬燵があるの?」

「自分家は自分が片付けさせなかったので、まだ有ります。退かされても何度でも抵抗しましたから」

 レオはあっけらかんとして言う。

「あんた、どんな抵抗したのよ。下手したらあんたのご主人に嫌われるわよ」

 ナナさんが呆れた顔でレオに言う。

「片付けようとする手に飛びついただけですよ。大丈夫ですよ。猫の可愛さにメロメロですから」

「男のレオが可愛さって言うと、ちょっと違和感を感じるね。あんまり想像したく無いけど、可愛子ぶってるんだ」

 コロが苦笑いするなかナナさんはフフと笑う。

「猫が猫被ってるだけよ」

「ですね」

 レオはそう言って笑うと、空を仰ぎ見て昨日の嵐を思い出す。

「昨日は酷い天気でしたね。自分は炬燵に潜ってやり過ごしましたよ。自分のご主人も怖がって炬燵の中に入って来て、抱きしめてくるから毛に変な癖が付いちゃって。今日は朝から毛繕いに時間がかかりましたよ」

「レオは愛されてるねー。レオのご主人はレオを心配してたんだよ」

「そうなんですかね」

 レオは恥ずかしそうに顔を手で擦る。

「僕達は怖かったからくっ付いて寝てたよ。ねぇ、ナナさん」

「コロが汚れてたから毛繕いしてあげてただけでしょ」

 ナナさんはつんと顔を上げて誤魔化す。

 レオも何と無くそれで察しがついた表情をしていた。

「もう春の嵐は起きないかな?外で遊べないのはつまらないや」

「もう無いんじゃないですか」

 レオは晴れ渡る青空を見て言う。

 コロもつられて見上げる。

「春だね〜」

「このまま穏やかな天気だといいわね」

 ナナさんも気持ち良さそうに空を仰ぎ見る。

春の嵐の後には穏やかな時間が待っていた。

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