第49話 チュー太の旅 帰り編(5日目〜7日目まで)

『帰りは丁度雨が降り始めて、5日目は少し移動したんですけど、あまり長い時間雨に打たれるのは身体に悪いと思って、昼過ぎには雨を凌げる場所に逃げました。

近くに橋があったので良かったです。ただ、夜は寒かったですね。

6日目も朝から雨が降ってたので、断念しました。ただ、近場で食べ物を探したりしていたら、1日経ってました。今回の旅でやっぱり寝床と食べ物の確保が難しいのが、分かりました。

7日目は雨足も弱くなってたので、意を決して進みました。

千切った葉っぱを体に巻きてけて、お手製の合羽を作り濡れにくくしてたんですけど、やっぱり少しずつ濡れていくんですよ。

そんな時に大きな石があったので、その下に入って雨を凌ぎました。少し寒くて手が悴んでました。ちょっと心細く感じていたら、大きな石が動いたんです。地震かと思って慌てて逃げ出しましたよ。

振り返ってみると、石から顔や足が出ていて大きな亀だったんです。しかも、結構なおじいさん。

気のいいおじいさんで、おいらが雨で困ってる事を伝えると甲羅の上に乗せて川を下ってくれたんです。

ヤタさんと空を飛んだ時とは違ったスリルがありましたよ。結構激しい流れだったので、あってこっちに揺られて大変でした。一度や二度は川に落ちて溺れかけましたけど。面白かったですね。

住処の近くで亀のおじいさんと別れて、 歩いていたら、待っていてくれたのか家族の姿が見えてとても嬉しかったです。

その日は家族とくっ付いて寝ました。凄く暖かかったです。』



「おお。何とか予定通りに帰って来れたんだ。でも、何で亀のおじいさんはチュー太を乗せてくれたのかな?」

 コロが不思議そうに首を傾げる。

「それはカナヘビから話を聞いていたらしいです。おいら、行って帰って来るってカナヘビに言ってたので。どうやらその話が亀のおじいさんにまで伝わっていたらしくて」

「情けは人の為ならず、ですね」

 モグリが関心した様に呟く。

「そうなんですかね。あんまり実感無くて」

 チュー太は頭をガリガリとかく。

「チュー太にとっては怒涛の1週間だったからよ。でも、今度は余裕を持たせて行くんでしょ?」

「はい!今度はもっと余裕を持った旅にします。雨の日の過ごし方ももう少し工夫出来そうだったので、今度それも試してみます」

「気を付けてね。今度はそこの動物がどんな生活してるのか教えてよ」

「はい。それじゃ、そろそろ帰りますね。また帰って来たら顔見せに来ます」

 チュー太は手を振ると穴の中に消えていった。

「チュー太さん。楽しそうですね」

 モグリが自分のことの様に嬉しそうに言う。

「モグリも旅に出たら?」

 ナナさんが言う。

「いえいえ、私はのんびりしているのが性に合っていますから」

「あら、私と同じね。のんびり出来ないとイライラするのよね。旅もたまには良いのかもしれないけど、話を聞くだけで十分よ」

 3匹はチュー太の次の旅に想いを馳せながら、のんびりと寛いだ。

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