第46話 チュー太の旅 2日目

『2日目はおいら自分のお腹の音で目が覚めました。暗い穴に盛大に響いて、まるで怪物の唸り声のようで恐怖しました。

まだ空も白かったのを覚えてます。

白い空を一羽の鳥が飛んでる姿が美しく、白いキャンバスに描かれた絵画の様でした。しかも、動く絵画ですよ。最高でしょ?

すぐにお腹が鳴って、飢えに襲われましたけど…。

まぁ、最初の目標は食べ物の確保ですよ。何が何でも食べないと死んでしまいますから。

?いやいや、下手したら餓死しますよ。コロさん、何甘い事言ってるんですか。

食べ物は意外とすんなり見つけました。おいら達ネズミは雑食ですから、それに偶々なんですが人間のお菓子が落ちてたんです。

ピーナッツとカリカリのお菓子が最高でした。おいら、自分だけで食べるのはいけないと思って、雀達にも分けてあげたんです。そして、残ったピーナッツは葉っぱで包んで何個か非常食にしました。

このピーナッツであんな事になるとは、その時は夢にも思ってもなかったです。

待ってください。まだ先の話ですから、その時に話します。

お腹が膨れれば元気になりますよね。単純だけどそんなものです。おいらは元気に歩き始めました。

おいらはグングン進みました。いや、進まざるを得なかったんです。朝の雀に追い立てられていたからです。

折角食べ物を分けてあげたのに、ピーナッツを狙って飛び掛かってくるです。

流石のおいらも腹が立って、何度か威嚇をしましたが暫くするとまた飛び掛かってくる。

もう本当にイラついたので、目の前でピーナッツを食べる事にしました。お腹も減ってきたので。

包んだ葉っぱから取り出した瞬間、強欲な雀がピーナッツをガッチリと掴んでました。でも、おいらも離すわけもなく渾身の力で握りました。

おいらと雀の力比べ。負けてなるものか!全力で引っ張る。雀の奴も負けじと引っ張る。結果、おいらは空を飛んだんです。体感では凄く高く飛んだ気がしますが、多分そんなに高く飛んでは無いと思います。でも、本当に飛んだんです。

ただ、雀の野郎は力尽きたのか、ピーナッツとおいら共々川に落としたんですよ。

本当はもっと進むつもりだったのに、濡れたから早めに休む事にしました。

湿ったピーナッツが何となく悲しかったな。』




「ちょっと、待って。チュー太は旅にでたんだよね?」

 コロが驚いた表情で尋ねる。

「旅と言うより冒険のお話だよ」

「中々、凄い体験してるわよね」

 ナナさんも同意する様に言う。

「題名をつけるなら、[ネズミと雀の力比べ]ですかね?」

 モグリが笑って言う。

「違うよ。[チュー太、空を飛ぶ]だよ」

 コロも便乗する。

「あんた、気を付けないと本当に死んじゃうからね」

 ナナさんの忠告にチュー太は頭を掻いていた。

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