第44話 帰ってきた
「今日は暖かいですね」
土の中にいるはずのモグラのモグリが、仰向けに寝転んで日差しを浴びている。
隣にはコロも同じように仰向けに寝ている。
「もう春だね〜」
「いつもは穴の中だから、あんまり分からなかったけど日の光って最高ですね」
「春の光は最高だと思う。気持ち良くて眠くなるもん」
二匹はそう話すと、心地良い眠りへと落ちて行く。
「お久しぶりです」
元気な声で二匹は目を覚ます。
コロは声が聞こえた方に目を向ける。コロの目には逆さまに映るチュー太の姿があった。
「コロさん。モグリさん。おいら帰ってきたよ」
嬉しげなチュー太の声にコロは慌てて起き上がる。
「おかえり。旅はどうだった?」
「いや〜、楽しかったですよ。まだ、山の麓までしか行けなかったんですけどね」
「おお、凄いね。何か見つけた?」
「大きな亀に会ったんですよ。おいら、あんなに大きな亀は初めてです」
「私は亀に会ったことご無いのですが、どんな動物なんですか?」
モグリが身体を起こして、髭をヒクヒクと揺らしながら申し訳なさそうに尋ねる。
「亀さんはね。水の中にいて、時々地上にででくる甲羅を持ってる動物だよ。後、草食系が多いはず」
「残念。間違えてるわよ、コロ」
ナナさんの声がして驚いて振り返る。
「え?何で?蜘蛛さんが飛んでるから嫌だって」
「チュー太を見かけたから、出てきたのよ」
ナナさんは笑って言う。
「水棲種は肉食、陸棲種は草食だったはずよ」
「えっ?じゃあ、おいらが会った亀は肉食だったのか…。何か急に怖くなってきた」
チュー太は怯えたように震え出した。
「もしかして、水の中にいた亀だったんですか?」
「そうなんすよ。その亀が背中の甲羅に乗せてやるって言ってくれて」
「水の中に引き摺り込まれなくて良かったわね」
ナナさんがチュー太の不安を煽る。
「でも、引き摺り込む気なんて更々無かったんじゃないかな?現にそんな事されてない訳だしさ」
「そうですよ。私もそんな気がします。それより、亀の甲羅はどうでした?」
モグリの質問にチュー太は少し迷う。
「う〜ん。不思議だった。硬くて滑らかで、それでいて大きい。安心する様な感じもした。目線が変わって世界が変わった気がした」
「いいですね。私も乗ってみたいです」
「僕も見てみたかったな。で、他には何かないの?」
コロが話しの先を促す。
「ちょっと落ち着きなさいよ。チュー太。最初から順序立てて話して頂戴。その方が面白そうだわ」
ナナさんの意見に皆が同意して、そんな流れになった。
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