第43話 空へ
最近ナナさんが庭に出て来ない事が、気になったコロはナナさんに尋ねてみた。
「最近、庭に出ないけど何で?」
無邪気な表情のコロが寝ていたナナさんを覗き込む。
目を開けたナナさんにはコロの鼻だけがデカデカと目の前を塞いでいた。
「近いわよ」
サッと空気を切り裂きナナさんの猫パンチがコロの眉間を打つ。
「いたっ!別に叩く事ないじゃ無いか〜」
不満を口にしながらもコロは距離を取る。
「もう。で、何で外に行かないの?具合悪いの?」
「違う。外に行きたく無いのよ」
「なんで?外気持ちいいよ。どんどん暖かくなってきてるし」
コロの頭の中には燦々と輝く太陽があった。
「そうね。ならヒントをあげるわ。暖かくなると出てくる者はな〜んだ?」
「つくし」
「そうだけど、今回の話には関係ないわ。次!」
「じゃあ、トカゲ!」
「いいわね。近づいているわよ。次!」
「あっ!分かった!変態さんだ。人間って暖かくなると変な人が出てくるんでしょ?」
コロの悪意のない言葉にナナさんは呆れる。
「あんた、時々悪意無く酷い事言うわよね。極少数いるかもだけど、違うわ。もっと小さい生き物よ」
「え〜、もう分かんないよ」
「なに?もう諦めるの?」
「ナナさん。降参!答えを教えてよ」
コロは何度も何度も教えてと呼びかける。
流石のナナさんも根負けしてしまった。
「今日、庭に出たら良く目を凝らしなさい。特にバラの辺りや柵を見ると分かるわよ」
ナナさんはそれだけ言うと、ゆっくりと毛繕いをし始めた。
庭に飛び出たコロは急いでバラに駆け寄って行く。最初は何の変哲も無いように見えたバラには細い糸が絡んでいた。
コロは顔を近づける。細い糸の上を小さな蜘蛛が沢山登って行く。
蜘蛛だと気づいた瞬間、コロの体中の毛が逆立った。悲鳴をあげそうになったが、コロの中に生じた疑問で冷静になる。どうして小さな蜘蛛達はバラの幹を登って行くのだろうか?
急に突風が吹く。目を瞑る瞬間に空にたなびく糸が見えた。今度は目を瞑らないように気をつけていると、風に乗って蜘蛛達が空に飛んでいくのが見えた。細長い糸をお尻から出して、風が吹くたびに空へと舞い上がって行く。
最初は気持ち悪いと思ったけど、何だか凄い瞬間に立ち合ってるのだと思うと身体が踊り出す。
「凄いや。そうやって遠くまで行くんだ。いってらっしゃい!元気でね」
コロは風と共に踊り続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます