第42話 風邪引き
前日、海で濡れたコロは元気いっぱいに庭を走り回っている。赤い顔したご主人はフラフラと庭に面した窓に歩み寄って、恨めしそうに外をいや、コロを見つめていた。
「なんで、コロは元気で私が風邪ひくの?」
ポツリと呟く。
ナナさんは心配そうにご主人の隣に座り様子を伺う。
「ご主人。無理せずに寝てないとダメよ。あのあんぽんたんは、私が見てるからゆっくりしてて」
ご主人はナナさんの顔を見て何かに気づいた。
「ナナさん。コロが戻ってくる時は私を起こしてくれる?」
「分かったわ」
ナナさんの返事に笑うとご主人はリビングを出て行った。
外ではコロが空中に向かって飛びかかっていた。
「コロは何やってるのかしら」
ナナさんが不思議に思い眺めていると、レオが塀の上を通って行く。
コロもレオに気付いたようで、尻尾を振りながら近寄って行った。
ナナさんにはコロとレオの話は聞こえないが、楽しげなのは伝わってくる。
どうやら、レオはコロに話をし始めたようだ。レオは塀の上で、控えめな身振り手振りを駆使して話している。コロの反応に満更でもない表情をしているのが、面白かった。
レオは意外と話好きなのかもしれない。
もしくは、コロが相手に話させるのが上手いのかも知れない。
大きなリアクションを取られると、話してるのが楽しくなるのよね。あれはワザとやってるのかしら?まさか、あのコロだし…なんてナナさんは尻尾を揺らしながら考える。
ほんのちょっと眠気を感じて目を閉じる。暖かい光に包まれて、体が溶けていく。
トントンと心地よい音がナナさんの耳に届く。片目を開けて見ると、窓にコロの鼻が押し付けられていた。
「ナナさ〜ん。開けて〜」
ナナさんは目を閉じる。
「ナナさーん」
焦ったコロの声が聞こえるが、ナナさんはゆったりとしている。
「コロ。あんたご主人に風邪を引かせたのに、楽しく遊んでるんだ」
ふ〜んと嫌味を込めた声に、コロはやってしまったという表情をした後、顔を背ける。
「まっ、あんたを部屋に入れなきゃご主人が心配しちゃうから入れてあげるわ」
そう言うと、ナナさんは器用に窓を開けるとコロを招き入れた。
コロは少しだけ反省したのか、ソファーに小さくなる。
ナナさんは窓を閉めると大きく欠伸し、機嫌良く毛繕いを始めた。
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