第41話 海と波

 海にやって来たご主人とコロ、ナナさんは砂浜に座って水平線を眺めている。

 コロは波に興味が湧き、恐る恐る近づいていく。押し寄せては引いていく波が小さな水飛沫をあげる。コロは海から潮の匂いがするのに気がついた。

「ナナさん、凄いしょっぱい匂いがするよ」

「これが海の匂いよ」

「そうなんだ。変な感じだね。川とは大違いだ」

「そうね。海は何も無いし、向こう側も見えないわ」

 コロは波打ち際から海へ近づく。押し寄せて来た波に足が濡れる。コロは冷たさに飛び退く。

「うひゃあ。思ったより冷たいや」

 コロは濡れた足を砂に擦り付けて乾かそうとする。

「ナナさん、どうして海の水は一定の方向に流れないの?川は同じ方向に流れて行くのに」

「海は特別なのよ。海は色んな川と繋がっているの。コロが想像するより沢山の川から流れてきた水が、あっちへこっちへ流れるから波になるのよ」

 ナナさんはニヤリと笑って言う。

 コロは何だか怪しいと思ったけど、ナナさんの答えに納得した。そして、波に顔を近づけて舐めてみた。しょっぱい味に涎が垂れる。

「うえ〜、しょっぱい。じゃあ、なんで海はしょっぱいの?川はしょっぱくなんて無いよ」

「さて、どうしてかしら。海についての逸話を今度ヤタに聞いてみたら?」

 澄まし顔のナナさんは、打ち寄せる波ギリギリのところに座り、前足で軽く波に触れていた。

「うん。聞いてみる。知らない事がまた増えた」

 コロは疑問が生まれたのを楽しんでいた。疑問が世界に知らない事があると教えてくれるからだ。

 コロは波に飛び掛かる。コロは波と追いかけっこに夢中になった。そして、案の定濡れてしまった。

 ご主人は困った顔をして笑っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る