第40話 海へ

 車の後部に乗ったコロとナナさんは、それぞれの大きさのクレートに入っている。

「今日はどうしたんだろ?病院かな?」

 コロは不安な顔で隣のナナさんを見つめる。

「違うと思うわ。ご主人は楽しそうに、お出かけよって言ってたし」

 ナナさんは箱座りしながら、のんびりと欠伸をしている。

 コロは落ち着きなく何度も座ったり立ったりを繰り返す。コロは猫に捕まえられたネズミの気分だった。ふと、今頃チュー太はどうしてるかな?なんて疑問が浮かんだ。

「さあ、着いたよー」

 車の前の方からご主人の声が聞こえる。そして、後方のドアを開けてコロ達を降ろす。

 いつもとは違う匂いが沢山する。コロの鼻はすぐにフル稼働し始めた。

 ナナさんもいつも以上に興味を示す。

 コロとナナさんが連れてこられたのは、海だった。陽の光は暖かいが、風はまだ冷たさが残る。

 潮の匂いはコロもナナさんも初めてだった。

「なんか、変な匂いだね」

 そう言って、海を見つける。遠いけど、波の音も微かに聞こえてくる。

「さあ、行こう。海には入れないけど、砂浜に行ってみよう」

 ご主人はリードをひいて、海を目指す。階段を降りるとサラサラとした沢山の砂場が広がっていた。

 コロもナナさんも足の裏を包む様な感触が気持ちよかった。

 波の音は近づくに連れて、うるさくなる。潮の匂いも強かった。

「なんか、海って凄いね」

 ナナさんが答えなかったのは、コロと同じ事を思っていたからだ。

 コロはお座りすると、目の前に広がる青い世界に心奪われた。

 ナナさんも遠くの方を見ようと、後ろ足で立ち上がる。水平線の向こうは見えない。

 ご主人もコロとナナさんの隣で、コロとナナさんの見る青い世界に想いを馳せた。

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