第37話 三寒四温

 昨日は確かに暖かかった。なのに、今日は凍える様に寒い。

 一度、庭に出たコロはあまりの寒さに、尻尾を巻いて帰ってきた。

「寒い。昨日はあんなに暖かかったのに…」

 部屋に戻ってきたコロは、炬燵に入る。冷たくなった身体に心地よい。

「ナナさんが外に行かなかった理由が、よく分かったよ」

「お帰り。やっぱり寒かったのね」

 ナナさんは炬燵の中から、窓の外を見つめると、雲で翳った空が見える。

「何でこんなに寒いの?ナナさん」

「理由は知らないけど、春先は三寒四温って言って、暖かくなったり、寒くなったりを繰り返すのよ」

「変なの」

 コロは不満な表情だ。

「あら、やっぱり寒かったのね」

 ご主人が炬燵に籠るコロを見て、言う。

「お洋服でも着る?」

 ご主人がコロに聞くが、コロは耳を動かすだけで、答えない。

「臍曲げちゃったのかな?」

 ご主人はコロの頭をぐちゃぐちゃに撫で回す。

「寒いのは嫌だよね。しかも、暖かくなったと思った後は、特にね」

「そうなんだよね」

 コロは珍しく愚痴をたれる。

「よし、今日は私も炬燵に入って、のんびりするぞー」

 ご主人はコロとナナさんの間に入って来る。

「ふぁ、暖かい。気持ちね」

 ギュッとご主人がコロを抱きしめてくれる。さっきまで、凝り固まっていたコロの心が柔らかくなっていく気がした。

「寒い日には、寒い日の楽しみ方を見つけなさい」

 ナナさんが、コロに投げかける。

 コロは少し反省する。

「寒い日の楽しみ方か〜。炬燵に籠る事かも」

 コロは笑う。

「あら?コロの機嫌も良くなったみたい」

 ご主人も笑う。

 そして、一人と二匹は炬燵にこもって、寒い日を楽しんだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る