第34話 炬燵みかん
炬燵に入ったナナさんは顔だけを出して寝ている。コロはご主人が炬燵で蜜柑を食べているのを、座って見ている。
「何?コロも欲しいの?」
「ご主人。欲しいか、欲しく無いかで言うなら、断然欲しい」
「よーし。じゃあ、お座りして。次にお手。今度はおかわり。いいね。最後は〜、バーン!お利口さん、コロ」
ご主人は仰向けのコロのお腹を、わしわしと撫でまわす。気持ち良くてコロの尻尾は、絶好調に動く。
「では、お利口なコロには蜜柑をあげよう」
コロは驚くほど速い動きで起き上がる。
「よし」
ご主人の合図と共に蜜柑はコロの口の中へ。蜜柑独特の甘味が口の中に広がると同時に、蜜柑は胃の中へと消えていった。
「はい、もう一つ」
ご主人がもう一つ差し出す。コロは迷わずに食べる。こうして、コロは丸々一個分を食べる事ができた。
「美味しかった?もうお終いね」
ご主人は、舌なめずりしているコロの頭を軽く撫でる。
「美味しかったなぁ。あれ?ご主人。ナナさんの分は?」
「どうしたの?まだ食べたいの?でも、食べ過ぎはダメよ」
ご主人に伝わらず、コロはナナさんに尋ねる。
「ナナさんは蜜柑食べないの?」
寝ていたナナさんの目がゆっくりと開く。
「あー、猫は蜜柑ダメなのよ。正確には皮がダメなの」
ナナさんはまだ、ぼんやりとしている。
「ナナさん、食べられないんだ」
「そうね」
気のない返事をするナナさん。
「猫はチョコレートもダメでしょ。犬も食べられないけど」
コロは炬燵に入りながら呟く。
「ついでにネギもダメよ」
ナナさんは、横から顔を出したコロに言う。
「暖かい。意外と食べられないの多いよね。しかも、食べられない物が共通してる。人間のご主人は食べられるのに」
炬燵に入って、蜜柑を頬張るご主人を見つめる。コロが見つめる中、ご主人は何個も何個も蜜柑を食べ続けた。
「僕も欲しい」
そう言うとコロは炬燵の中から、ご主人の方に顔を出す。ご主人は、コロの鼻先に蜜柑を差し出す。コロは直ぐに食べた。やっぱり、蜜柑は美味しい。だから、チョコレートは美味しいんじゃないかと、コロは思った。差し出される蜜柑を食べながら、コロはチョコレートの味を想像した。
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