第30話 鳶の声

『昔々、金鵄に憧れた一羽の鳶がいました。彼は空を飛ぶのが大好きで、いつも羽を広げて飛んでいた。

大きな空を自由に飛びながら、鳶は高らかに歌う。動物達は鳶のその歌を聞くのが好きで、皆んな歌が聞こえると空を見上げる程だった。

機嫌良く飛ぶ鳶はある時、自分が何処まで飛べるのか気になった。そして、もっと高く飛びたいと思った。その思いは日に日に大きくなる。

何日も空を見上げる鳶はある事に気付いた。いつも空にある太陽は金鵄なのではないか、光り輝く金鵄が地上を照らしているのだと。

鳶は覚悟を決めると、空に飛び立った。何度も羽ばたき、早く空を昇ろうとする。疲れては風を捕まえて、さらに上空へと昇っていく。その間、太陽はゆっくりと流れていく。未だに太陽に届かない。体力は底をつき、敢えなく地上へと戻された。

鳶は悲して鳴いた。ピーヒョロローと空に向かって。太陽は西の空へと消えていく。ただ、ただ鳶は鳴いた。』



「ってな話だ」

 ヤタがドヤ顔で言う。

「そうなんだ。そう言われると鳶の鳴き声は悲しい気がするね」

 コロは空に鳶の影を探す。青々とした空には太陽だけだった。

「元々は歌が上手かったなんて言ってるが、そんな事は無いと思うがね、俺は」

 ヤタが少しだけ拗ねた様に言う。

「でも、カラスよりは絶対上手いわよね?」

 ナナさんがコロに聞く。勿論コロは正直に答えた。

「うん。カラスより鳶の声が綺麗だもん」

 ヤタは不満で飛び跳ねる。

「二人して、酷いじゃねえですかい」

「でも、本当の事よ」

 コロとナナさんは笑う。ヤタは悔しそうに一声鳴いた。しゃがれた声が響いた。

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