第29話 鴉と鳶
陽の当たる庭に、二匹と一羽がのんびりと寛いでいる。
「そうだ。名前の話が出たから鳶の話をしよう」
ヤタがコロを見てニヤリと笑う。
「鳶って高い所をぐるぐる回って飛んでる鳥でしょ?」
「そう、その鳥だ。さて、ここで鴉と鳶の関係についてだが、あまり良くはない」
「どうして?ケンカでもしたの?」
「そうだな。ケンカじゃなくて争っているってのが正しいな。じゃあ、どうしてかと言うと、意外と鴉と鳶は似ているからなんだ。どっちも鳥の中でカッコいいだろ?」
ヤタのドヤ顔にコロは目を丸くする。ナナさんは「何言ってんのよ」と小さく呟いた。
「僕は鳥さんのカッコ良さはよく分からないかな」
「嘘だろ!このスマートなボディーの美しさが分からないとは…。コロ坊にはがっかりだ」
「アホ言ってないで、話の続き」
ナナさんは苦笑いしながら言う。
「そうですね。まず、神話からの因縁があるんだ。前話した八咫烏。これと同一視されてしまうのが、金鵄という存在だ。金鵄ってのはこれまた神話に出てくる光り輝く鳶の事なんだけどよ」
ヤタは分かるだろと言いたげな顔でコロを見る。
「なんとなく分かった。何故か同じに扱われるんだね?それが嫌なんだ」
「その通り。鴉もいい迷惑なんだよ。八咫烏も金鵄もどちらも素晴らしい存在なのに周りが、一緒くたにするから気不味くて」
ヤタはほとほと困ったと大きく肩を落とす。
「コロ坊で例えるなら、名犬ハチ公を猫と一緒にされるんだぜ。そら、怒るよな」
「嫌だな、それは」
コロの答えに満足げに頷く。
「それともう一つの理由は、食べる物と住む場所が近い事だな。これが1番の理由かも知れ無いな」
ヤタは大袈裟に頭を抱える。コロは心配そうに見つめる。
「仲良く出来ないのかな?」
コロの疑問にはっと顔を上げる。
「そんな事は無いさ。ある意味では似た者同士だからな。それにこの前、仲良くなった奴がいるから。そいつから話を聞いたのよ」
自信満々なヤタを見て、コロは笑う。コロとナナさんは、ヤタが話す時に身体全体を使って表現するのが面白くて仕方がない。
「俺があいつ、鳶のイーグルに会った時の事なんだけど」
そこに割り込むナナさん。
「ちょっと待って。鳶なのにイーグルなの?」
「ええ。あいつは鷹に憧れてたらしくて…。名前は変わってますけど、気のいい奴ですよ」
「どんな話をしたの?」
コロに促されヤタは胸を張り一息つくと話始めた。
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