第27話 着せ替えコロ
ナナさんの笑顔に恐怖したコロの尻尾は身体の下に隠れてしまう。
「怖がらせないでよ。ただ、洋服着るだけたがら、僕は怖くないもん」
「なら怖がらなくて良いじゃない」
ナナさんはソファーに飛び乗ると深く体を沈める。ご主人はダンボールの中から一枚の薄い布を取り出した。
「さあ、コロ。これを着るよ」
「分かった」
コロが立ち上がりご主人の元へ行く。
「コロ、後ろ足上げて」
コロは言われるがまま動く。お腹の辺りを締め付ける感覚がして、コロはズボンなのだろうと思った。
カメラのシャッター音と同時にご主人とナナさんが吹き出す。コロは何を笑われてるのか分からずに呆けた顔をする。
「コロ、凄く似合ってるじゃない」
ナナさんの視線はコロの下半身に向けられている。コロが自分の姿を見ようと振り返るとお尻に白い布がつけられていた。見ようによっては、オムツに見える。
「いやだよ、こんなの。カッコよくないよ」
「褌を履いたコロ。意外といいかも」
ご主人は気に入ったようで、笑いながら写真を数枚撮る。
「ご主人。この格好は嫌だよ。他のにして」
コロはご主人を鼻で突いて訴える。
「嫌だった?結構似合ってるのに。じゃあ次はこれにしようか」
ご主人が取り出したのは、タキシードだった。
「そうだよ。そういうの。ちょっと動きにくそうだけど、褌よりはマシだよ」
「はーい。じゃあ、まずは右足か入れるよ」
すんなりとタキシードを来て、キメ顔のコロをご主人は写真を撮る。
「どう、カッコいいでしょ」
「ええ、カッコいいわよ。似合ってるじゃない」
「カッコいいよ。しかも、タキシードに褌。このアンバランスな感じがさらに良い」
その言葉で褌を履いたままな事に気付いて、お尻をご主人に向けた。そして、ぐいぐいとお尻を押し付ける。
「ごめん、ごめん。調子にのっちゃった。そんなに嫌かー」
ご主人は渋々、褌をとる。コロの表情は晴れやかだ。いい笑顔で写真に収まる。
「では、最後はフード付きパーカーだよ」
赤いパーカーはタキシードとは違ってゆったりとしている。コロはその場で飛び跳ねて動き易さを確かめる。
「これは良い。僕気に入ったよ」
ご主人は一瞬一瞬を大事にするように何度も撮る。
「いいね〜。定番だけど可愛い。そうだ。ナナさんとコロ並んで」
ご主人はナナさんを抱き上げて、コロの横に置く。
「二人とも笑ってー。って、そう簡単にはいかないか」
ご主人は少し考えるとカメラを構える。
「二人とも、後でおやつ食べようか」
ご主人の言葉が終わる前にシャッターがきられた。画面には目を輝かせた二匹が映っていた。ご主人は満足そうにカメラを片付けた。
「二人とも、お洋服は脱ぐ?」
「まだ着てる」
「わたしもまだ着ててもいいわ」
コロはナナさんを見て笑う。ナナさんは目を逸らすとキャットタワーを駆け上った。
おやつも貰えて二匹は満足。
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