第25話 夢の中

 コロはご主人と散歩していた。いつもとは違う場所で一面花が咲いている。コロは花畑の中をご主人と一緒に縦横無尽に走り回る。

 ふと、ナナさんがいない事に気づいた。

「ナナさーん。どこー。ナナさーん」

 何度も呼ぶが返事が無い。いつもだったら、直ぐに顔を見せてくれるのに…。花畑で姿が見えないのかも知れないと、顔を突っ込んでみる。花の茎が沢山並んでいてる中でモグリが現れた。

「コロさん、お久しぶりです。」

「やあ、モグリ。元気?」

「ええ、新しい住処が見つかって快適に過ごしています。ですから、今日はコロさんを家に招待しようと思いまして、挨拶に伺ったのです」

 モグリは鼻を細かく動かしながら言うと、コロに背を向けて穴を掘っていく。コロは慌ててモグリを追いかけた。

「うわー。土の中って意外と快適なんだね。もっと、ジメジメしてるのかと思った」

「皆さん、そう仰られるですよ。さあ、着きました」

 モグリの消えた先から光がさしている。コロが通り抜けると、そこには見た事もないお城と地底湖が広がっていた。

「うわ〜。凄いね。まるで地下世界だ」

 コロの言葉にモグリは嬉しそうに笑う。

「昔から人間は地下に不思議な世界があると信じてきました。死後の世界、地獄、地下世界など色々な呼び方で、時には恐れ時には憧れていたそうです」

「そうだ。ご主人も連れて来ていい?」

「大丈夫です。先に来られて、待ってらっしゃいますので」

 モグリが城を指し示す。すると、城門が開き、中からナナさんとご主人が歩いてくる。

「何してるの?早く冒険に行くわよ」

 ナナさんの尻尾が興奮したように揺れている。

「みんなで地下深くに隠されたお宝を探しに行きましょう」

 ご主人の合図でコロは走り出した。城門を潜れば見た事もない食べ物が、露店で売られている。三人は片っ端から食べた。どの店の食べ物も三等分にして分け合う。もう、美味しくて美味しくて頬が落ちる思いだった。

「コロ、見て。大きな木の根。あの下に財宝があるらしいのよ」

 ナナさんの視線の先には大きな木の根があった。余りにも大き過ぎて根の部分しか見えていない。

「行ってみよう。早く行こう」

 コロは走る。街を抜けてたどり着いた木の根には穴が開いていた。人一人通れるような穴だ。覗き込むと木の根が何処までも下に伸びている。

「滑り台みたいだ。僕1番」

 そう言ってコロは乗り込む。

「ちょっと待ちなさい」

 ナナさんがコロを追いかけ、最後にご主人が追いかけた。

 木の根は縦横無尽に伸びていて、急カーブや1回転なんかして最高に楽しい。風を顔に受けて三人は笑い声や歓声をあげる。そして、たどり着いた地の底には、家があった。ご主人とナナさんとコロが住む家。

「これこそ、お宝だね」

 コロは家に入ると自分の寝床に向い横になる。

「楽しかった」

 ナナさんもご主人も嬉しそうに頷く。

「また、遊びましょ」

 ご主人が二人を撫でる。

「また、明日」

 コロは目を閉じると、静かな寝息を立て始めた。

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