第24話 豆まき

 ご主人がお昼過ぎに窓を開けて部屋を掃除し始めた。大きな音を立てて掃除機がリビングを行ったり来たりするが、コロとナナさんは気にせずに寝ている。

「コロー、ちょっと退けて」

 ご主人はそう言いながら、コロのお腹に掃除機を当てる。それでもコロはお腹の違和感に気付かずに、気持ち良さそうに寝ている。

「嘘でしょ」

 唖然とするご主人の声にナナさんが目を覚ました。ナナさんが下を見れば、ご主人が笑いながら、コロを掃除機で吸っている。コロも途中で目が覚めていたけど、掃除機で吸われるのが気持ちいいのか、されるがままになっている。

「ナナさんもやる?」

 一頻りコロで遊んだご主人がナナさんを見てくる。

「ご遠慮させてもらうわ」

「ナナさんは興味なさそうだね」

 ご主人はナナさんを撫でると、掃除機を片付けそして、雑巾を持って来ると床を拭き始める。

 さっきまで、寝ていたコロもご主人を眺める。何やらご主人の機嫌が良い。今も鼻歌まじりに掃除している。

「どうしたんだろ、ご主人」

「さあね。何かいい事でもあったんじゃない?」

「ご主人、機嫌が良いから何かくれるかも」

 コロは締まりのない顔で笑う。

「ご主人、僕も手伝うよ」

 コロは立ち上がって、ご主人に近寄る。ご主人はコロに気づくと、コロの顎の下を撫でる。

「もうちょっと待ってね。すぐ終わらせるから」

 その言葉でご主人が遊んでくれるんだと、コロは思った。

「分かった。大人しく待ってる」

 お座りして待つ。


 数分すると、拭き掃除が終わったようで、バケツと雑巾を片付けた。そして、リビングに戻ってきたご主人の手には、沢山の豆が入った器があった。

「今から、豆まきをします。コロもナナさんも、『鬼は外、福は内』って言いながら食べたね。行くよ」

 その瞬間、コロは立ち上がり、ナナさんはご主人の足元に逃げた。

「鬼は外ー。服は内ー」

 ご主人の楽し気な声に合わせて、沢山の豆が床に転がっていく。床をたたく軽やかな音にコロは踊るように、跳ねたり、回ったりを繰り返す。ナナさんは跳ね返ってきた豆を前足で転がして遊ぶ。

 何度か繰り返されて、豆は部屋中に転がる。

「さて、今度は豆を回収します。では、お二人とも良いですか?」

 コロもナナさんもご主人に顔を向けて合図を待つ。

「レッツゴー」

 その合図で各々、床に散らばった豆を回収し始める。ご主人は一粒ずつ器に入れていく。コロは一心不乱に豆を食べまくる。ナナさんは落ち着いたスピードで一粒ずつ食べていく。

 ご主人は手を止めて、二匹を見ると嬉しそうに微笑んだ。

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