第23話 暇つぶし
朝から大粒の雨が降っている。屋根を打つ音が部屋に響く程だ。
コロはつまらなそうにソファに寝転んで、キャットタワーを眺めていた。
「あ〜あ、今日は雨かー」
コロのぼやきにナナさんが顔を上げる。
「あら?コロは雨が嫌いだっの?」
「嫌いじゃ無いよ。ただ、外に出してもらえないから、つまらないんだ」
コロは不満な顔を外に向ける。
「仕方ないわよ。外で遊べないなら、室内で遊べばいいじゃ無い」
「えー、でも室内で走り回ると危ないし、ご主人に怒られるかも…」
コロの答えにナナさんは笑ってしまう。
「コロらしいけど。どうしてそんなに動くこと前提なの?室内なんだから、大人しく遊べるものにしなさいよ」
ナナさんの言葉にコロは真剣に考える。
「でも、遊びって身体を動かすものでしょ?その中で、あんまり体を動かさないものかー」
「ごめんね、コロ。言葉が悪かったわ。遊びじゃ無くて、暇つぶしをやりなさい」
「暇つぶし?」
「そう、雨が止むまで暇をつぶすの」
「なんか面白そう」
コロの尻尾は元気に動き出した。
「でも、何をしようかな」
「そうね。コロはお話を聞くのは好きでしょ?」
「うん」
「じゃあ、お話を創るのはどう?」
コロはソファの上に座り直し、ナナさんを見つめている。尻尾はさらに勢いを増して左右に振られる。
「創作話をヤタに聞かせて、ヤタを信じ込ませたら勝ちみたいな」
「面白そう。僕頑張ってお話考えるよ」
そう言って、コロは黙々と考え始めた。時々、ぶつぶつと呟いたり、うろうろと歩き回ったりする。
ナナさんの予想に反して、コロは凄い集中力を発揮していた。1時間経っても、2時間経ってもコロは考えている。少しばかり心配になったのは秘密だ。
夕方には雨は止み、青空が広がっていた。地面も泥濘んでいる所もあるが、散歩には行ける状態だった。
「コロー、ナナさーん。お散歩行くよー」
ご主人の声に反応して、二匹は玄関まで走っていく。玄関では、ご主人にリードを付けて貰いながら、ナナさんがコロに尋ねた。
「時間潰しにはなった?」
「うん。楽しかったよ。あれ?どんなお話だったか忘れちゃった」
コロは忘れてしまったのに笑って言う。コロは散歩できる事が嬉しくてたまらないらしい。
「さあ、行こう」
ご主人の合図で外に出ると虹が出ていた。コロは虹を追いかけて走り出す。ナナさんはそんなコロを呆れながらも追いかけた。
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