第20話 星に願いを

 今日はみんなで夜空を見上げている。急にご主人が庭にイスを出して、ずっと鼻歌を歌っている。凄く機嫌が良い。

「ねえ、ナナさん。ご主人何かいい事があったのかな?」

「さあね。さっきまで、何か見てたみたいだから、その影響じゃないかしら」

 二匹の視線の先では、のんびりとお酒を飲むご主人がいた。

 ナナさんは軽く伸びをするとご主人の膝に飛び乗った。

「ご主人、私達にも何か食べ物はないの?」

 ほろ酔い気分のご主人はナナさんの訴えに気付かず、ただ撫でくりまわす。

「ナナさんは可愛いね〜。どうしてこんなに可愛いのかな?それはね、お嬢様だからよ」

 なんて、変な事を口走っている。

「ち、ちょっと。乱暴に撫でないの。こら!」

 ナナさんの猫パンチを受けたご主人はさらに嬉しそうにしている。ガシッとナナさんの足を掴むと肉球に鼻を近づけ、クンクンと匂いを嗅ぎ始める。

 さすがのコロもこんなご主人の醜態に何も言えなかった。

 数分して満足したのか、ご主人は立ち上がると鼻歌交じりに家の中に戻って行った。

「あんた、助けなかったわね」

 息を切らしたナナさんが恨みがましくコロを見やる。

「ごめんね。でも、あのスイッチが入ったご主人は止められないよ」

 コロは苦笑いするしか無かった。

「それより、ご主人の歌ってる曲聞いた事ある気がするけど、ナナさん知ってる?」

 コロは話をすり替える。ナナさんはため息一つ吐くと答えてくれた。

「あれは確か、『星に願いを』って曲だったはずよ」

「へぇ、『星に願いを』か。でも、星にお願いをするのはなんで?」

「人間にとって星は特別なのよ。生まれた地域とかで考え方は変わるみたいだけど。例えば、死んだ存在が空に飛んで行って星になるって考え方もあるのよ。他には、空の上には神様達がいて、星をその神様達に見立てて、お願いしてるのよ」

「へぇ。じゃあ神頼みなんだ」

「そのつもりなんじゃない」

 コロは納得したと言わんばかりに頷き、空を見る。沢山の星が煌めいていた。

「おーい、戻ったよ」

 ご主人がコロとナナさんのおやつを手に帰って来た。

「二人にもおやつが有ります。食べたい人?」

 ご主人の声にコロもナナさんも素早く反応する。

「はーい。では、まずコロちゃんに。そして、ナナさんにも」

 手渡されるおやつを嬉しそうに咥える。カリカリと食べながらコロは言う。

「お星様は神様だよ。こんなにいい事が起こるなんて、絶対そうだ」

 ナナさんは笑う。

「そうかもね。お星様に感謝しないと」

 コロはおやつを食べながら、心の中でお星様に感謝した。

 夜が更けゆく中、皆それぞれ思い思いに星を眺めた。

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