第19話 眠れぬ夜は
暗い室内でコロは何度も寝返りを打つ。どうにも寝付けない。
立ち上がり、寝床を前足で引っ掻いて整える。気の済むまでやって、身体を横たえると目を瞑る。何だか、身体の据わりが悪い。頭を起こすと、頭上からナナさんの声がした。
「寝れないの?」
「うん。なんか身体がむずむずして落ち着かないだ」
コロは早く寝たいのだが、どうにも寝れなくて困っていた。
「あんた、昼間に寝過ぎなのよ」
ナナさんに言い捨てられて、コロは言葉に詰まる。
「そ、それはそうなんだけど。今は早く寝たいんだ。ナナさん、どうしたら良いかな?」
「横になって、目を瞑って、羊を数えるのよ。そうすれば、眠くなるそうよ」
コロは早速試す事にした。
「羊が一匹。羊が二匹。羊が三匹。羊が四匹。羊が五匹。……………………」
コロの頭の中に、沢山の羊達が溢れていく。コロの意識がぼんやりとし始めた頃、羊が暴れ出した。ケンカ騒ぎに見えたけど、そうじゃなく、何かに追われているらしい。その正体はコロだった。いつの間にか、コロは羊を追いかけ回すのが楽しくなっていた。
ハッとコロは目を覚ました。
「もう少しだったのに…」
「コロ、寝れなかったの?」
「うん。途中までは良かっただけど、最後で僕が羊を追いかけちゃって、みんな逃げてった」
コロの言葉にナナさんは笑う。
「コロらしい夢じゃない」
「笑い事じゃないよ。余計に寝れなくなって来た」
困り果てたコロ。
「コロの場合、寝る前にお話聞くと変な夢見て余計に寝れなくなるわよね?」
「うん、そうなりそう」
「じゃあ、仕方ないわ。最終手段よ」
自信満々なナナさんにコロは集中する。
「ご主人と一緒に寝ましょう」
そう言うとキャットタワーから静かに降りると、リビングを出て行く。コロはナナさんを追いかけて、ご主人の寝室の前まで来た。
「勝手に入って怒られないかな?」
「大丈夫よ。ご主人がそんな事で怒るわけないでしょ」
ナナさんはコロにドアを開ける様に顎で指し示す。
コロはドアノブを掴むと器用に開けた。
室内にはご主人の寝息が聞こえる。コロは音を立てない様にご主人の枕元に立った。気持ち良さそうなご主人の寝顔をコロは鼻でつついてみる。
ご主人は薄く目を開けてコロを見た。
「あれ?コロどうしたの?」
寝ぼけ目で頭を撫でてくれる。
「ご主人。寝れないんだ。一緒に寝ていい?」
布団の中に顔を突っ込んでアピールする。すると、ご主人は掛け布団を開けて、コロを招き入れてくれた。
「あれ?ナナさんは?」
「私は足元の方で寝るから気にしないで」
ナナさんの返信を聞いて、ご主人はコロを抱き枕に眠りに落ちていった。
コロは一定のリズムで聞こえてくるご主人の寝息と温もりを感じながら、目を閉じる。やっと、深い眠りへと落ちていった。
みんなの寝息が穏やかにながれていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます