第14話 おこぼれ頂戴

 部屋の中に肉の焼ける音と芳ばしい匂いが広がっている。ご主人がホットプレートで肉を焼いているのだ。コロもナナさんもご主人の側にピタッと寄り添うと離れようとはしない。

「ああ、美味しそうだな。僕も食べたいな」

「涎垂れてるわよ」

 ナナさんに言われ、コロは前足で口を拭う。

「ご飯食べたばかりだけど、お腹が空くよ」

「不思議よね。肉の焼ける音とか匂いを嗅ぐと、お腹が空くのよね」

「本当、本当。でもさ、ナナさんは熱いの食べられないよね?なのに何で焼く音と匂いに反応するんだろ?」

「あんただって、熱いの苦手でしょ。食べ慣れて無いからよ。そう考えると人間って凄いわよね。焼いたり、煮たり、色んな方法で食べ物を調理するんだから」

「僕は自分の事食いしん坊だって思うけど、人間は僕以上に食いしん坊だと思う」

 二匹が話し合っている様子を見て、ご主人は笑う。

「はい、はい。ちゃんと二人にもあげるから良い子で待っててね」

「勿論だよ。僕達ちゃんと待てるから」

 そう言いながらも、コロはご主人ににじり寄る。

「コロ、それ以外近づくと油が跳ねるわよ」

 ナナさんの注意も虚しく、言った側から肉の油が盛大に跳ね、コロの鼻の頭に飛んでくる。

「熱い!」

 驚いたコロは飛び上がり、そのまま後ろにすっ転んだ。あまりに大きな音にご主人は焦り出す。

「ちょ、コロ大丈夫?氷、氷持ってくるから」

 ご主人はコロの背中をさすると、急いでキッチンへ向かう。

「もうコロのバカ」

 呆れたとコロを見やる。ふとホットプレートを見ると、スイッチが切られてなかった。

「ご主人!ホットプレートの電源切って無いわよ」

 ナナさんが呼ぶが、ご主人に聞こえていないらしい。

「どれかしら?どのボタンだったかしら?」

 ナナさんも焦り出す。

「肉が焦げちゃう」

 ナナさんの心配は肉であった。ナナさんはどれを押そうか迷った挙句、一番大きなボタンを押してスイッチを切った。

「コロ。冷たいだろうけど、これ鼻に付けときな」

 ご主人がタオルで包んだ氷をコロの鼻に乗せる。そして、ホットプレートを見て電源が切れているのに気付いた。横のナナさんを見ると焼かれている肉を凝視している。

「ナナさんが、止めてくれたんでしょ。ありがとうね」

 ご主人はナナさんの頭を撫でる。

「このまま、余熱で焼いちゃおうか」


 そうして二匹の分の焼肉を作り終えると、皿に分けて食べさせる。それからご主人は自分の食べる分を焼き始めた。

 コロとナナさん、そしてご主人は美味しい焼肉で舌鼓を打ったのだ。

 コロとナナさんはおこぼれが貰えるからか、焼肉が大好きだ。

「明日も焼肉だと良いな」

 口を舐め回しながら、コロは笑顔でそう言った。ナナさんも同意するように一声鳴いた。

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