第13話 猫の通り道

 コロとナナさんが庭で遊んでいると、見知らぬ猫が塀の上を歩いていた。猫もコロやナナさんが居ることに気付かなかったらしく、全体の半分程の所で気付き足を止めた。

 三匹の間で微妙な空気が流れる。

「やあ、君だれ?」

 一番に口を開いたのはコロだった。

 見知らぬ猫はビクッと身構える。

「あんたね。ここは私達のテリトリーよ。さっさと出ていきな」

 ナナさんのドスの効いた声で、見知らぬ猫は腰を抜かしてしまった。

「ナナさん、それ怖いよ。それにただ通ってるだけなら良いんじゃないかな」

「コロはあまいのよ。知りもしない奴が通るって不快なのよ。それにバカな奴は変な所に粗相をして行くわ。コロだって臭いの嫌でしょ」

 そう言われて、コロは同意せざるを得なかった。

「すいません。自分は道路挟んで四件向こうに住んでいるレオっていいます」

 固まっていたレオも少し余裕が出て来たのか、毛繕いをしながら答える。

「良かったね。これで知らない奴じゃなくなったよ」

 コロはニコリと笑う。

 ナナさんは言い返そうと思ったが、グッと飲み込んだ。

「そうだ。折角だからレオ君、何か話してよ」

「話?」

 レオはコロを見る。

「コロは話を聞くのが好きなのよ。御伽噺だったり、近所の噂話だったり。あんたがココを通るのなら、それが条件よ」

 ナナさんはもうこれでいいわよと言いたげだった。

「話ですか…。では、こんなのはどうですか?」

 こうやってレオのお話は始まった。



自分は結構、外をあちこち歩き回るのが好きなんです。で、この前公園に行って日向ぼっこしていたら、雀達が近くに来ていたらしく話し声が聞こえてきたんです。

話の内容は、ご飯の事、猫に襲われる場所、餌やり人間とかを話してたんですね。

ああ、雀も大変だなぁと思ってたんです。

すると、一羽の雀が飛んで来て、仲間が蛇に食べられたって言うです。

自分も驚いちゃって、体起こして声出しちゃって、「それは大変だ」って。

雀達は大慌てでしたけど、何故か話の流れから自分も雀の葬儀に参加する事になったんです。

勿論、遺体はありませんよ。蛇のお腹の中ですから。

それでも、雀達は沢山集まって、一斉に鳴くんです。まるで、歌ってるみたいでした。そして、最後には泣きながら、皆んな一斉に空に飛んでいくです。

自分、初めて雀の涙を見ましたよ。

みんな、空に飛んで行くから、涙が小雨みたいになって、虹ができたんです。




「凄いね。雀の涙。綺麗だったんだろうな」

 コロは輝く笑顔で空を見上げる。

「綺麗でしたけど、雀に飛びかかりそうになりました。本能が疼いて我慢するのは辛かったです」

 レオは初めて笑顔を見せた。

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