第12話 炬燵の魅力

 寒くなって来たある日。ご主人がリビングに炬燵を出してくれる。コロもナナさんもこの時を待ちに待っていた。

 コロは炬燵の準備をしているご主人の周りを跳ね回り、ご主人の邪魔をしてしまう。

「こら。落ち着いて、コロ。すぐ終わるから」

 ご主人に注意されても、止まらない。興奮状態に陥ったコロはさらにその場でグルグルと回り始める。

「コタツ、コタツ、コタツ、コタツ」

 キャットタワーから降りていたナナさんがコロに注意する。

「コロ、邪魔しないの。ご主人に早く出してもらわなきゃ」

 ナナさんも言葉とは裏腹に、ソワソワと落ち着きなく動き回っている。ナナさんは自分を落ち着かせる為に、爪研ぎを始める。力一杯引っ掻く。

 ご主人はそんな二匹を見ながら笑う。

 しっかりと炬燵布団がつけられると、コロとナナさんは炬燵の中へと潜り込む。二匹はご主人がスイッチを入れるのを、今か今かと見つめる。低い音がして炬燵の中は赤く光だした。

「ついた」

「何だか、あの赤い光を見ると落ち着くわ」

 ナナさんが欠伸をしながら呟く。

「不思議だよね。僕も何だか急に眠くなって来た」

 コロが欠伸を噛み殺していると、布団が捲れてご主人の顔が覗いてくる。

「お邪魔してもいいかしら」

「「どうぞ」」

 ご主人は二匹の返事を聞くと足を入れてきた。そして、身体ごと入ってくると、炬燵の中で横になっている。ナナさんはご主人の右側で丸くなっている。コロはご主人の左側で鼻先だけを外に出している。

 十分ほど経つと、寝息以外聞こえなくなった。

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