第10話 狸は化かすもの

昔々、ある所に人を化かして楽しんでた狸の三兄弟がいたそうだ。

その中で三男だけは、心優しくて脅かしたりしなかったんだ。むしろ、人に化けて人と遊ぶのが好きだったらしい。

だけど、長男と次男がやたら人を驚かせる。だから、その辺りでは狸っての嫌われていたんだ。

そんな中、長男と次男が驚かせたせいで、小さな子供が川に落ちた。危うく溺れ死ぬところを人に化けた三男が助けたらしい。

でも、人間達はさすがに怒って、狸を殺す事にしたそうだ。

その話が村中に広がるなか、子供達は三男の事を心配していた。子供達は気付いてたんだ。よく遊ぶ相手が狸の三男だって事に。

子供達は悩んだ。三男には死んでほしく無い。そこで、考え付いたのが三男に死んだフリをさせる事、そして自分達が殺した事にして大人達に信じ込ませる事。

山狩が始まる前に、別れを告げに来た三男に子供達は必死に説得した。三男は皆んなの思いを受けてその方法を取る事にした。

山に戻った三男は長男、次男に死んだフリをしようと訴えたが、全く聞く耳を持たず。最後は人間に殺されたそうだ。

三男は子供達の言う通りにして、助かったそうだ。

それからだそうた。狸が人を化かすより、死んだフリをする様になったのは。




「何だか悲しい話だね」

 コロは項垂れる。尻尾も元気を無くして、動きをとめている。

「そうだな。でも教訓話でもあるからな。他人に悪意を持って行動すれば、自分に返ってくる。化けるって凄い能力があっても使い方を間違えちゃいけね」

 ヤタはしみじみと言う。

「ヤタ。もしかして、狸は化かすって本当に信じてるの?」

「もちろんです」

「もしかして、この話は狸に聞いたの?」

 ナナさんは苦笑いしながら尋ねる。

「そうですけど、何でですか?」

「狸は元々臆病なのよ。死んだフリも本当に驚いて気絶しているって聞くわ。化かす能力なんて本当は無いのに、教訓話に託けて自分達を大きく見せてるのよ」

「何ですか、それじゃあ俺は騙されたって事ですかい?」

「そうね。騙されたわね」

「かあー。狸野郎。良い話だと思った。俺がバカだった」

 ヤタは不満を露わにしている。コロはニコニコとヤタに言う。

「でも、お話自体は面白かったよ。それに良いお話だと思う」

「そうかい。コロ坊に喜んで貰えたなら良かった」

ヤタはそう言って高らかに笑う。

「狸に騙されたのは癪だが、仕方がない。今度あの狸にあったら驚かしてやる」

 ヤタはニヤリと笑う。

「それじゃあ、そろそろ森に帰ります。気が向いたらまた来ます」

「じゃあねー」

 ヤタは木から飛び立つと、サッと上昇して森の方へ帰って行った。コロとナナさんはそんな後ろ姿を見送る。

「ヤタも意外と騙されやすいのね」

「今度、僕もヤタを騙してみよう」

 コロが悪い笑顔をしている。

「コロには難しいんじゃないかしら」

 伸びをしながらナナさんは言う。

「うん。だから、狸と知り合いになって、騙し方を教えてもらうんだ」

「あんた、ちゃっかりしてるわね。なら、まずは狸を見付けないとね」

 ナナさんは楽しそうに笑った。

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