第9話 カラスのヤタ
コロとナナさんが庭でのんびりと過ごしていると、一羽のカラスが飛んで来た。カラスは木の枝にとまると、大きな声を出す。
「お久しぶりです。姐さん」
よく響く声が庭中越えて近所に広がっていく。
「うるさいわよ。近所迷惑になるでしょ」
ナナさんは負けない位大きな声で返す。そして木に登ってカラスの横にいくと、小さく呟いた。
「おかえり」
「ヤタだー。久しぶり。元気にしてた?」
コロは嬉しくて木の下を跳ね回る。
「おう、コロ坊。オメエも元気みたいだな」
ヤタと呼ばれたカラスは、動き回るコロを見て笑う。
「元気だよ」
木に前足をかけて、立ち上がる。コロの尻尾は千切れんばかりに振られていた。
「いや〜、ここに来ると帰って来たって実感するんだよな」
「何言ってんの?アンタの住処は森でしょ?」
「いや、そうなんですが。姐さんやコロ坊を見ると、ついホッとすると言うか」
「僕達の事が好きなんだね」
コロの言葉にヤタは吹き出してしまう。そして、高らかに笑う。
「確かに、それは間違いない」
ヤタは素直に認めた。
ヤタにつられてナナさんも笑う。コロだけは、何で笑われてるか分かってない顔をしていた。
「いや〜、コロ坊は素直でいいな。話してて楽しくなるや」
「僕もヤタのお話大好きだよ」
「そうかい、そうかい。だったら、今回仕入れた狸の話をしてやろう」
ヤタは胸を反り、姿勢を正す。
「僕、狸知ってるよ。この前テレビで見た。沢山のお化けを作り出して、通りを練り歩くんだ」
本当の事だと信じきっている顔でコロが言う。ヤタは何の事か分からず、ナナさんに助けを求めて目を向けた。
「コロが言ってるのは、アニメ映画よ。狸が妖力で人を化かすって設定だったのよ」
「なるほどな。コロ坊、そんな人を化かしてきた狸の話だ」
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