第8話 朝の見回り

 朝一番に目を覚ますのはナナさんだ。ナナさんは起きると、まずリビングのキャットタワーに登り、部屋中を見渡す。それからカーテンレールを伝って棚の上に。棚の上の人形やぬいぐるみを倒さないように隙間を通り、端まで行くと床に飛び降りる。それから、今度はテレビの裏側に滑り込む。そしてカーテンの裏側。カーテンの裏では外を眺めて様子を窺う。ジーっと見つめるナナさんに気付く事無く、庭には鳥達が木々の間を飛び交い遊んでいる。ナナさんの尻尾はゆっくりと揺れている。

 その頃、コロはお腹を空かして目が覚める。寝起きに大きく身体を伸ばして、盛大なあくびをする。それから、鼻を鳴らしながらナナさんを探す。とは言え、大体はカーテンの裏に居るので、カーテンに顔を突っ込む。

「おはよう、ナナさん」

 ガラスの外に集中しているナナさんは顔を向ける事無く答える。

「おはよう」

「鳥さんが沢山来てるね」

 コロが欠伸混じりに言うと、鳥達は二匹に気付いたのか、さっと空へと飛び立った。

「あっ、逃げられちゃった。ごめんね、ナナさん」

「気にして無いわよ。私はただ見てただけだから」



二匹は連れ立ってキッチンへと向かう。高い所はナナさん、低い所はコロが見回る。

「ナナさん、何か食べられそうなの無い?」

「さすがにご主人は置きっぱなしにはしないわよ」

「お腹空いて来たなぁ」

「だったら、ご主人を起こしてきたらどうかしら」

「僕行ってくる」

 コロは元気いっぱいに駆けて行った。

 ナナさんはまた見回りに出る。脱衣所、洋服部屋、そしてご主人の部屋。

 ご主人の部屋の中では、コロがベッドに入り込んでご主人を起こしている。その間にナナさんは高い所に登って部屋を見渡す。一通り見回って満足したのか、ナナさんはコロとご主人を見つめる。

「ご主人、朝ですよ。ご飯が欲しいです」

 コロは布団を剥ぎ取ろうとするが、ご主人がコロを抱き込んでしまった。コロは手も足も出ない。

「コロ、もう少し寝かせて。一緒に寝よう」

 コロの困った顔をご主人は眠ったまま撫でる。

 このままでは埒が明かない。ナナさんはベッドに飛び降りる。クッションにされたご主人が苦しそうな声をあげた。

「ご主人、もう起きなさい。私もお腹空いたわ」

ご主人の頭をペシペシと叩きながら、ナナさんは言う。

「うぅ、わかった。起きるから」

 ご主人は観念したらしく、素直に起きるとキッチンへと向かう。コロもナナさんもご主人の後について行く。


 ご主人にご飯を貰った二匹は玄関に向かう。ご主人もそれに気づいて玄関を開けてくれる。

「今日も外の見回りですか?ご苦労様です」

 そう笑って二匹を見送ってくれた。

 庭に出て、コロは色んな匂いを嗅ぐ。ナナさんは塀の上に登りそこから木に登る。

 コロは花壇の周りや草むらの中をしっかり調べる。

 ナナさんはいつの間にか屋根の上に乗り、のんびりと欠伸をしていた。

 それから二匹は各々、庭のあちこちで遊んだ。30分程経つとご主人の呼ぶ声がして、二匹は家の中へと帰っていった。

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