第7話 日向ぼっこ

 庭に面した大きなガラスに陽の光が差し込んでいる。ここは午後の特等席。コロは横になって、いびきをかいていた。時折、寝息が止まったり、寝言を呟いたりしている。

 ナナさんはゆっくりと近づくと、コロの顔あたりに陣取り毛繕いを始めた。最初は顔、それから耳の裏、頭、そして身体。一通り終わると、今度はコロの頭を毛繕いし始める。

 コロはむず痒そうに身体を揺らすと、ポツリと寝言をこぼした。

「ナナさん、僕を食べないで」

「食べるわけないでしょ」

 ナナさんは呆れて呟く。

「私をなんだと思ってるのかしら」

「お姉ちゃん」

「当たり前じゃない。まったく、コロは…」

 そう言うと、コロの毛繕いを再開した。かなり嬉しそうな表情をしていたが、見ているものは誰もいなかった。


 コロが目を覚ますと、ナナさんが横で眠っている。ナナさんは仰向けになって寝息をたてていた。コロとガラスの間にはまり込んで居るので、息苦しそうだった。

 コロは声をかける。

「ナナさん。そこ狭いでしょ」

「はいはい、やってあげるから」

 ナナさんは寝ぼけながら、コロの顔に抱きついて来た。しかも意外と力強い。

 驚いて立ち上がりそうになったけど、コロは我慢する。無理矢理引き剥がす事も出来たけど、ナナさんを起こしたくなかったコロは、諦めてされるがまま横になった。


「あら、二人で仲良く日向ぼっこだ。しかも、同じ寝相」

 ご主人は二匹を見て笑う。

 コロもナナさんも仰向けで、顔はガラスとは反対側に向いていた。おそらく眩しかったのだ。

 ご主人は二匹にタオルケットをかけると、スマホで満足いくまで、激写していた。二匹を起こさないように慎重な動きをしているが、シャッター音が何度も鳴っている。10枚、20枚と繰り返し、やっと満足したようだった。

 暫くすると、ご主人はコーヒーを片手に、二匹の側に座り、一緒に日向ぼっこを堪能した。



 コロが目を覚ますと、外はもう暗くなっていた。ナナさんはキャットタワーでのんびりと寛いでいる。

 「コロ、起きた?二人とも、ちょっと遅いけど、ご飯食べたら散歩に行こうか?」

 ご主人の声で二匹はご主人の元まで駆け寄った。

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