第4話 お風呂は大好き
今日は濡れたから、急遽お風呂になった。原因のコロは玄関で嬉しそうに尻尾を振っている。ナナさんはコロの尻尾が邪魔だったようで、コロの尻尾を踏んづけて座る。
「すぐにお風呂にしようね。ちょっと待っててね」
ご主人は二人にそう言うと、お風呂場へと姿をけす。
「まったく。何で飛び込むかな〜?」
「えへへ、つい楽しくて」
ナナさんは、軽く肉球パンチをコロのお尻に放った。
「ちょ、ナナさん。」
「何か言う事は?」
ナナさんのパンチは止まらない。
「ご、ごめんなさい」
「ふん」
ナナさんは、コロの謝罪に荒い鼻息をかえす。
そこにご主人が雑巾を持って戻ってきた。
「さあ、二人ともお風呂に入って」
ご主人に促され、大人しくお風呂場に向かった。お風呂では、ご主人がシャワーを出してくれていたので、コロもナナさんも我先にと飛び込んで行く。熾烈な争いに勝ったのはナナさんだった。すんでのところで負けたコロは不満そうにナナさんを見つめるしかなかった。
「あら、コロは優しいのね。ナナさんに譲ってあげたの?」
お風呂場に入って来たご主人を褒められて、コロははち切れんばかりの笑顔を向ける。
「そうなんです。僕はナナさんに譲ったんです」
「嘘ばっかり。私に負けただけよ」
ナナさんの言葉を無視してコロは撫でて貰う。
「じゃあ、コロから洗おうね」
ナナさんは、お湯を溜めた桶に身体をつけて、温まる。
その間にコロは泡まみれになっていた。
「痒いところは無いですか?」
「無いですー」
ご主人のマッサージでふやけた顔のコロが気持ち良さげなため息と共に呟く。それにつられて、ナナさんも「気持ち良い」と呟く。
シャワーでコロの身体の泡を洗い落とすと、今度はナナさんの番。その間、コロはお湯を張った桶に身体を沈める。
ご主人の手際のよさで、あっという間に顔だけ残して、泡だらけになったナナさんは気持ち良さそうに目をつぶっている。
「ナナさんも痒いところは無いですか?」
「あ〜、もう少し、もう少しだけ、マッサージお願い」
コロとナナさんは二人一緒に幸せのため息を吐いた。
ナナさんの泡を洗い流すと、ご主人はたずねる。
「ナナさん、もうあがる?」
ナナさんは桶に身体を入れて「まだ」と答えた。
ご主人は笑ってお湯をいれてくれる。
ナナさんもコロも、心と身体が柔らかくなっていくのを感じながら、お風呂を堪能するのだった。
ご主人はそんなコロとナナさんを見つめながら、優しく微笑んでいた。
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