第3話 散歩は一緒に

「散歩に行きますよ」

 ご主人の言葉で、寝ているコロも寛いでいるナナさんもご主人の元へ一目散。その上、言われもしないのにお座りまでするのです。

「二人ともお利口さん。それじゃあ、まずはナナさんから着けようね」

 ナナさんは「はーい」と返信をすると、ご主人に身を任せる。赤い首輪にピンクのリードを着けて貰う。

「次はコロの番だよ」

 コロもこの時は大人しく、ご主人に身を委ねる。茶色い首輪に青いリードを着けられて、コロは嬉しくて堪らない。

「見て、ナナさん。格好いいでしょ」

「いつもと変わらないわよ」

 そんな事を言い合ってると、ご主人の準備も整ったので、三人で家を出る。

「散歩中は車や自転車に気をつけようね。さあ、出発」

「「出発」」

 三人は家を出た。


 早速コロは匂いをクンクンと嗅ぎ始める。いつもと同じアスファルトの匂いに、嗅ぎ慣れない人の匂いも微かにする。誰か知らない人が通ったらしい。こんな風に細かくチェックする。

 ナナさんも匂いを嗅ぐけど、コロ程ではない。ご主人から離れないように、漂う匂いを楽しむ程度だ。

 そんな二人の散歩の仕方から、コロを待つ様に立ち止まる事が多い。ご主人やナナさんは面白そうにコロを見守る。

「ナナさん、コロは何の匂いを嗅いでるのかな?」

 ご主人は笑いながら、ナナさんに尋ねる。

「あそこは犬の匂いがしたわ」

 ナナさんが言い終わる前に、コロはそこにマーキングしだした。

「あら、オシッコしたかったのね」

 コロがオシッコを終えると、ご主人はペットボトルの水をかけて洗い流す。

「折角マーキングしたのに、どうして流しちゃうの?」

「馬鹿ね。あんた達、犬がオシッコしっぱなしににすると町中オシッコ臭くなるでしょ。だから、洗い流すの。」

「なるほどね。僕も町中が臭かったら嫌だな」

 そしてまた歩き出す。


 数分もすると、いつもの公園にたどり着いた。ここでは、色んな生き物に会う。人はもちろん、犬に猫、雀なんかもいる。

 公園で人気なのはナナさんだ。いっつも、ナナさんを色んな人が撫でに来る。「お利口さん」とか「かわいい」とかチヤホヤされている。

 コロはそんなナナさんを見て、笑ってしまう。猫が猫被ってるんだもの。とっても澄ました顔してるのが、可笑しいよ。

 ナナさんは、コロを横目に睨みつけるけど、コロは知らないふりして、辺りをウロウロと誤魔化した。

 

 それから、河原に向かう。ここには公園とは違う生き物の匂いがして楽しい。コロなんかはずっとクンクン嗅ぎ回ってる。

 今日は何がいるかな。

 ナナさんは水辺から顔を出して、川の中の小さな魚を見るのが楽しみだ。時には見ているだけじゃなく、手も出してしまう。

 最終的には、ナナさんの後ろからコロが飛び出し、川の中へダイブ。そして、魚は逃げていく。

「あんたね、濡れちゃったじゃないの。」

「ナナさん、寒い」

 濡れ鼠状態のコロが川から上がってくる。ナナさんは急いで側から離れた。

「きゃー」

 コロのブルブルと身体を震わせ水を飛ばす。逃げ遅れたご主人だけが、被害を被った。

「もー、コロ。飛び込んじゃ、駄目よ。濡れてるから、もう帰ろう」


 最後は河川沿いの遊歩道を三人で並んで、ジョギングしながら帰る。コロもナナさんもご主人のスピードに合わせる。ただ、今日はいつもよりスピードが早かったのは、言うまでも無いだろう。

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