第2話 食べ方
「コロ、お座り。待てだよ」
コロの前にはエサの入った器が置かれている。食べたくて食べたくて涎が溢れてくる。
「ご主人。早く食べたいです。」
はやる気持ちが、身体を少しずつエサ皿に近づいていく。ご主人の「よし」の一言が凄く待ち遠しい。
「よし」
ご主人の声で、わーっとエサに齧り付く。声が出る程、一心不乱に食べる。一粒さえも逃さないように、皿をしっかりと舐めまわし、皿から溢れてないからチェックする。
「美味しかった」
満足して顔を上げる。ご飯サイコー。
「少しは落ち着いて食べなさいよ。みっともないわよ」
ナナさんがご飯を食べながらコロに言う。
ナナさんはいつもご飯をゆっくりと食べる。時々残して置いて後から食べる事もある。コロにとっては不思議でしか無い。
じっと食事中のナナさんを見ていると、コロも食べたくなってくる。
「ナナさん、ちょっと頂戴」
ピタッとナナさんの動きがとまる。
「駄目よ。これは私のだもの」
そう言うとまたカリカリと食べ始める。
さすがのコロも、ナナさんのご飯を勝手に食べるのは、危険だと身をもって経験しているから大人しくしているしかなかった。
「ねえ、ナナさん。どうしてナナさんはご飯の前にお座りとか待てとかしないの?何だかずるく無い?」
コロの唐突な疑問に、ナナさんは当然のこととして答える。
「そんなの簡単よ。する必要が無いからよ」
「どうして?」
「そうね。じゃあ、コロがお座りして待てをするのは、なんでか分かる?」
ナナさんの質問に真剣に考えるけど答えはでない。
「その答えは、落ち着いて無いからよ。あなた、いつもご飯の時にご主人に飛びつくでしょ。だからよ。私みたいにご飯を出してくれるまで待たないから、ご飯の前にお座りと待てって言われるのよ」
コロは目から鱗が落ちる思いだった。
「そうか。最初からお座りして待ってれば良いんだ」
嬉しそうに笑うコロに、ナナさんは訪ねる。
「で、ちゃんと待てるの?」
「分かんない」
「じゃあ、駄目じゃない」
ナナさんは呆れて言う。
「うーん。思ったんだけど、僕はご飯を貰えて嬉しい気持ちもあるけど、ご主人に感情の気持ちも伝えたいんだ。」
屈託のない笑顔がナナさんを見つめる。
ナナさんは、気持ちを伝える為に飛びつくのは、どうかと思ったが、そこには触れなかった。
「だったら今のままで良いじゃない。それにお座りも待てもすれば、ご主人に褒めて貰えるでしょ」
「本当だ。僕、今のままでいいや」
えへへとコロは笑う。
「ねえ、ナナさん。ちょっと頂戴」
「駄目」
コロは物欲しそうにナナさんを見ていた。
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