第2話 郊外の神殿
王都の郊外に白亜の神殿はある。
天空神たる主神の神殿。
その神殿に向かって歩く者の影が一つ。その足元からは時折赤い滴が落ちては、石畳に染みをつける──ある程度の地点から、もう血が止まったのか滴を落とすことは無かったが。
『……遠い』
普段ならば馬車で移動するような距離である。
歩いても歩いても距離が進んでいる気がしなかった──
『ってゆーか、何でこんな目にー』
ふらつく身体に鞭を打つようにして少女は歩く。
盛大な
夜の帷が色を変え、空に明るさが灯る頃──神殿に悲鳴が響き渡った。
「キャァァァァァ!」
土気色を通り越して蝋人形のような顔色をした、当代の聖女が神殿の入り口で倒れていた。
外套から覗く白い長衣は所々赤黒く染まり、彼女の黒髪には赤黒い塊がべっとりと付いている。
「聖女様が死んでます!」
「そんなわけ…倒れてらっしゃるだけです!」
『…いや、死んでるであってるんだけどー』
神殿は数刻の間、混乱を極めた。
「それでセリカ、どういう状況なのか説明してもらおうか」
神殿の最奥にある大神官の執務室で、騒ぎの中大神官の秘書に回収された聖女が些か不機嫌な大神官と向かい合わせに座わり、大神官の後ろに秘書官が立った。
朝から叩き起こされたであろう大神官は、寝起き間もない筈なのに隙はなく只苛立ちは隠さなかった。
『うわぁ…めっちゃ機嫌悪ぅー
セリカは大神官をおっさんと心の中で呼んでいる。
信者の前で言ったら殺されること間違いない位には熱狂的な
セリカは悩んだ。
暫し悩んだあと、セリカは少しふらつきながら立ち上がり外套を脱いだのだった。説明するより多分早いとセリカは踏んだ。
外套が下に落ち、セリカの血塗られた長衣が露になる──大神官と秘書官が息を飲んだ。
「…っ!ふざけやがってあのガキ!」
「血圧上がるよー」
「…セリカ、何があったらそうなるんですかね…?」
手間がかからないと思ったが、説明はやはり必要なようであった。
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