文芸書は2006年比ですら-45%

 ええ!? 嘘!? 本当!?


 ということで本当です。

 2006年の文芸書市場額が1471億円。2021年が811億円です。

 新書に至っては2006年当時424億円あったものが2021年になると217億円ですよ。半額っすよ。つまり学者が初心者向けに書く岩波新書などに代表されるものはもう「インテリ」の威光が無くなったとも言ってよい。

 データはありませんが……では出版市場のピーク年である1996年と比べたらどうなることでしょう。そりゃ恐ろしい額の下落になるでしょうね。まあ半額なんて数字では済まないでしょうね。筆者は文芸書・新書は1996年比だと約3分2が蒸発していると思いますね。それを考えたらラノベは2026年で2016年(ラノベ市場第二ピーク年)の半減見込みということで立派に大健闘という事ですけど遅れて衰退の時期がやって来たというだけであって。ところでこの新書の市場額を見てください。何かに似てませんか?


 そうだよ。ラノベ市場の額とほぼほぼ同額だよ。つまりアカデミックの世界の人が書いても世の中から見向きもされなくなったようにラノベもそうなったという事だよ。世が世なら「岩波新書が読める人」というだけでプチインテリ扱いだぞ。昭和30年代あたりだったら。


 ラノベも残念ながら新書同様に「オワコン」になってしまったということだ。


 それでも文芸誌に公募する意味はあってピーク時の3分の2も市場額が蒸発してもまだ800億円市場ってそれなりのデカさなんだ。そこがラノベ市場と決定的に違う部分。さらに児童書市場の横ばい傾向を見ると明らかに児童書の方に未来があるのは確実だ。だから「児童書(絵本・児童文学・児童向けアニメノベライズ)の公募の方に行きなさい」と私は言ってるわけだね。2022年の児童書市場923億円。よーく見てみよう。なんと2016年に文芸書市場額(827億円)を児童書市場(868億円)は抜いたんだ。以来二度と文芸書市場は児童書市場額を抜き返せていない。今や児童書>文芸書なんだ。信じられる? でもこれが現実なんだ。ただし、もうひとつ分かることがある。実は文芸書市場の下落は2016年で底を打ったんだ。つまりもうしばらくの間は文芸市場ではさらなる市場縮小というダメージを負うリスクは少ないということだ。さてラノベはどうだろう。もう市場額も毎年減少額から言っても新書同様に論外である。


 このように各分野の市場額と成長率を考えてからジャンルを決めて書くというのが鉄則なんだよね。特に大人ともなったらね。勝てる市場で勝負しないと君は高確率で負けるに決まってるんだ。それが「ビジネス」って言うんだよ。


 児童書市場が健闘し出版市場全体の下げが止まったのになぜ「若者の読書離れ」という感覚が取れないのか。それは出版市場の約半分が「漫画」特に電子漫画の伸びがすさまじいからだ。そういう市場に落ちたからだ。それは「読書」とはみなされないんだね。そして児童書市場が横ばいという事は15歳前後から日本人は書物というものから離れていき大学受験終了後に「頭がオワコン」になってから社会に出るという反知性主義の国だから、というのが真相なんじゃないのかな。証拠に社会人の1日平均学習時間はなんと約6分だ。他所の国から見たらいかに異常な数字で知的好奇心という人間として大事なものを日本人はここ約25年間も捨ててしまったのかを再確認してほしい。数字は嘘付かないよ。知的好奇心を失った国で文芸書を売るって無理ゲーじゃないかな。たとえそれがライトノベルだとしても。


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