第6話

「ようこそ、ピークス冒険者ギルドへ。今日はどのようなご用件で?」


と、俺たちを出迎えたのはロボットだった。どうやら、紛争地帯に戦闘能力をもたない受付嬢を配置することはしていないらしい。


「2日後に行われる作戦について聞きたい」

「……ぴぴ!作戦については、サーバーにアクセスしてデータを得てください」

「仲間を募集したいんだが」

「ぴぴ!現在は受け付けていません!」


以上。何の成果もえることなく、俺たちは冒険者ギルドを出る羽目になった。


––––問題は、無駄な外出をする羽目になって、とてもご機嫌ナナメなサーニャさんである。


どうしようか。飴でもなめさせるか?


「と、とりあえず……せっかく外に出たんだし、どこか寄ってかないか?」

「……いいけど、どこに?」

「え?」


何も考えてなかった。おれは慌てて検索を始める。


「ここに、ガンショップがあるみたいだな」


この《ピークス》は、緊急事態のためという名目で銃の携帯が許可されている。

ピークスの装甲が厚いので、そもそも生半可なビームは通らないという事情もある。とは言えもちろん、何もないのにいきなり銃を撃ったりしたらそれなりのペナルティがあるが。


「………」


サーニャが不意に何も言わずに立ち止まる。


「どうした?」

「血臭がするわ。それと……かすかに、悲鳴も」


ようするに、何かトラブルが起こっているということだ。


「どうするの?」

「……サーニャ、先行してくれ。俺も後からおいつく」

「了解!」


本来はこういうトラブルには首を突っ込まない方がいい。しかし、サーニャならなんとでもなるだろうし………それに、なんとなく行かせた方がいい気がするので、俺はサーニャにそう言った。


サーニャは生体強化された肉体のスペックもフルで生かして弾丸のように飛んでいく。俺はパーソナルデバイスを使ってサーニャの位置を追跡して、ボディスーツの身体強化機能を使って移動していく。大体、500mほどいったところで、サーニャへと追いついた。

……ここからの匂いと音を感知したのか……なかなかにすさまじい。


そこには、見覚えのある3人の男が、体を両断されて転がっていた。

そして、剣をかまえている興奮した様子の四人の男。


それと対峙しているのが、背後に銀髪の少女を庇っているサーニャと言った構図だ。俺はサーニャと少女の間に体を滑り込ませ、剣をいつでも抜ける体勢になる。


「おとなしく投降しなさい」


と、サーニャが威厳のある声で宣告する。


「うるせえ!」

「ここで引けるか!」


そんなお決まりの台詞を吐くと、四人の男たちは一斉に襲い掛かかる。


「……スター・ストライク」


そんな呟きが聞こえたと思うと、男たちは動作を停止し、そしてゆっくりと崩れ落ちた。

……何が起きたのか、さっぱりわからなかった。


と、銀髪の少女の上体がくらりと傾く気配がして、俺は慌てて受け止めた。

改めて少女の姿を俺はそこで見ることになった。


どこか神秘的な雰囲気をもつ、かなりの美少女だ。俺より若干背が低いものの、胸が大きく、恵まれたプロポーションを持っている。


「……大丈夫か?」

「は、はい……だいじょ……」


言葉が途切れ、みるみると顔が青くなる少女。

俺はくるりと位置を少女と入れ替え、殺人現場が見えないように取り計らう。


「あ、その、ありがとうございます……」


少女はこちらをむいてそうお礼を言った。

と、俺は少女の目がオッドアイであることに気づいた。

右目には優しさをたたえたエメラルドの如き碧色、そして左目は恒星のようにまばゆい金色だ。


「ひょっとして、君は……《アイ》か?」


そういうと、さっと少女の体が強張った。どうやら、あたりだったようだ。

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