第4話
「こちらが、用意してある書類です」
通された部屋には、大量の書類があった。主に、貴族籍の抹消に関する書類、通行権付与に関する書類、サーニャの冒険者ギルドへの紹介状、弾薬購入の許可証である。
生気を失った目になったサーニャが
俺はその間に、あるものの購入交渉を進めていく。
「......なんか、恐ろしい決済金額が見えた気がするんだけど」
「気のせいだよ」
俺はそう嘯いた。
「あとこれ、あなたのサインが必要な書類よ」
そう言うと、ピラリと紙を提示してくる。なになに?
「......婚姻届は、別に必要ないぞ?いや、サーニャがしたいなら喜んでするけど」
「え?」
サーニャは部屋にいる俺たちをここまで案内してくれた女性へと視線を向ける。女性は無言で目をそらした。
「......バカね。だまってれば結婚できたのに」
俺は肩をすくめる。
サーニャはピラリと紙を前に差し出すと、ぴっと指を突き刺す。2秒後、結婚届は紙の破片になった。
女性は顔を青くしてそれを見ている。かわいそうに......
「終わったわ。確認してちょうだい」
「は、はい」
女性はこわごわとこちらまでくると、ぱさりぱさりと書類をめくって確認をとる。
「完了です。これで、サーニャさんの貴族籍は抹消され、ありとあらゆる特権が消滅します」
「......なんだか、実感ないわね」
「ま、そのうちだろ。次は冒険者ギルド......だが、その前にパーソナルデバイスの設定だけやっちゃおう」
「わかったわ」
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冒険者ギルドでサーニャを登録し、デートの再開である。まず向かうのは、ボディスーツショップである。
俺の予備のボディスーツも《エイダ》と共に大気圏で燃え尽きてしまったし、このスーツも買い換えたい。
このコロニーには工場もあるので、注文すればすぐに作ってくれる。
ショップの扉をくぐり、中を見渡す。各会社の、色とりどりのデザインのスーツが並んでいた。
「素体は一番高いやつで。三着......いや、二着デザインしてくれ」
「......二着?」
「ああ。一着は俺がデザインするから」
「あまり変なの作らないでよ?」
「もちろん」
俺は買ったばかりのパーソナルデバイスを起動し、店内のローカルネットワークに接続する。店内を見廻りつつ、これだという昨日とデザインでモデルを作っていく。
十分後、完成したのがこちら。サーニャ作の一着目は、白をベースに黒のアクセントが入ったモノトーンのスーツ。赤髪とのコントラストが大変素晴らしい。
性能的はひたすら頑丈さに特化した艦船用ハイエンドスーツである。
お値段は、3,000,000cog。まあ、高い。
そして二着目は、サイバーポップな色彩豊かなスーツだ。性能は、いろいろなギミックが組み込まれた機能盛り沢山なハイテクスーツ。お値段は3,300,000cog。さっきより高い。
三着目は俺がデザインしたもので、深い青にダーククリムゾンのラインを入れた、全体的に彩度が低めな服だ。性能は、可動性ときやすさ、快適さを重視し、ARシステムをオプションとして付けてある。お値段は4,000,000cog。
なぜかこれが一番高かかった。
使い分けとしては一着目は《ノルネ》での戦闘時、二着目は惑星降下時やコロニー滞在時などの直接戦闘が想定されるとき。三着目は普段着、と言った感じか。
「......つまり、普段はほぼあなたデザインのやつですごすってこと?」
「まあ、そうなるな」
作戦勝ちというやつだ。
「それで、もう着替えるか?」
「いえ、このコロニーに滞在している間はこのままでいるわ」
「そうか。じゃあ《ノルネ》に送っとく。それじゃ、次は隣の店にいくぞ」
「隣?」
首を傾げるサーニャの手を引き、一旦店を出て隣の店に入る。
そこには、ローブ専門店がある。
ボディスーツは体にぴったりとフィットするように作られている。何でも、胸が大きいと谷間までくっきりと見えるとか。
そんな浮き出るボディラインを隠すため、大抵の人はローブをきている。今の俺はきてないが。サーニャをさらうときにズタボロになってしまった。
シンプルな色だけのやつから、サブカルのキャラものまで多種多様なローブがある中を、二人で漁っていく。
「選んだわ」
「早いな」
サーニャが選んだのは、シンプル......というより地味な、焦げ茶色のローブ。
「あまり目立たない方がいいでしょ」
「......まあ、それもそうか」
とりあえず俺もお揃いのやつを買い、ついでにこっそりと自分の趣味の奴も買った。あとでサーニャに着てもらおう。
「それで、次はどこへいくの?」
「医療ポッドはさっき注文しておいたから、あとはバスシステム、フードプリンター、ベッド、ソファ......かな」
「ふーん。ちなみに、医療ポッドはいくらしたの?」
「20.000.000cogだな」
自分の命より高いものはない。
「さ、行くか」
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