第6話
研究所内のものをすべて回収し終わり、いよいよ出発である。
『ジェネレーター出力、上昇、エンジン点火。基地システムに接続、ハッチオープン。《ノルネ》ハッチがしまっていることを確認。いつでも飛べます』
ぐわあん、と目の前の大扉がいろんなものを押し倒したり引きちぎったり潰したりしながら開いていく。
「《ノルネ》、発進!」
俺の号令に合わせて、《ノルネ》が動き出した。ヒュイインという心地よいエンジン音が機内に響く。ちなみに現在はオートパイロットモードである。さすがに、操作方法も船のスペックも知らずに操縦するほどの蛮勇はもっていない。
俺は体にかかるGをBGMがわりにしつつ、この船の仕様をコンソールに呼び出した。
まずは、シールド。軍用レベルの耐久力をもつ、お化けシールドである。五層あり、それぞれが戦艦の主砲を一発なら耐えて見せる出力を持つ。なかなかすごい。
次に、エンジン。古代船だけあって、かなりの出力を持っていた。そこらの船なら、これに追いつくことはまず叶わないだろう。
そして、武装である。
まずは、船体の上部分に設置された、超重ビーム砲二門。世にも珍しい、人が乗って当てるように設計されたものだ。一応、コックピッドからの操作や
つまり、わざわざ人が乗らなければ当てられないように設計されている、ということだ。
かといって、人間が当てられるかと言えば......それは話が別である。的が十分大きければ、あるいは近ければ当たるが、そうでなかった場合、自分がマッハで動きながらマッハで動く敵目掛けてビーム砲を当てるというあり得ない曲芸を要求される。
次に、船体前方にある、固定されたプラズマ砲二門。ちょうど、スリットの右と左にひとつづつある。
プラズマ砲......
当たれば強いの代名詞的存在、プラズマ砲。欠陥兵器とさえよばれるほどに弾速が遅いのだ。あたれば大抵の小型船のシールドを破壊するほどの威力を持つが......まあ、難しい武器だ。
そして、船体の側面にあるミサイル発射装置。これは普通の武器だ。弾薬がかかるのがネックだが、大抵のミサイルはシールドを貫通する能力を持っているため、いつでもどこでも使いやすい兵器である。
さらに、小型レーザー砲が八門。普段は船体内部に格納されていて、戦闘時に出して使うものである。ミサイルを打ち落としたり、敵艦のシールドに負荷を与えたり、用途は幅広い。
最後に、電磁加速式対艦弾道発射装置。長い。多分、翻訳した結果こうなったのだろう。まあ、つまりは対艦弾道ミサイルを加速して打ち出すための装置だ。対艦弾道ミサイルは高い(一発1000万以上する)ので、まあ当分は使うことがなさそうだ。
一応、実弾を打つこともできるが......補給と重量という大きな問題が存在するため使うことはほぼないだろう。
なかなかに多い......というか、一人で使うようには設計されていない。やはり、仲間を見つける必要がありそうだ。
おっと、忘れてた。最後に、これら膨大なエネルギーを消費する武装を支えるジェネレーター。こちらは、出力が頭おかしい数字だ。古代文明からすればちょっといい数字ぐらいなのかもしれないが......劣化コピーを使っている俺たちからすれば、とんでもないものだ。
まあ、表向きは軍用並みのスペック、ということでいいだろう。
『惑星の重力圏を脱出しました。これよりハイパードライブを起動します。......ハイパースペース突入まで、5......4......3......2......1......』
一瞬、
『このまま突入します。完成制御装置、レベルをマックスに設定......』
船が渦に飲み込まれていく。一瞬、ブラックホールが頭によぎるが、次の瞬間にはどこかの宇宙にいた。
『船体が大きくスピンしています』
「コントロール権限をイフテからレフラスに移譲」
『......完了しました。コントロール権限をイフテからレフラスに移譲』
俺はさきほど確認しておいた操作方法を思い出しながら、船体の側面にとりつけられたスラスターを駆使して船体の回転を抑えていく。
スラスターも、俺の乗っていた《エイダ》とは比べ物にならない性能をしていて、すぐにスピンが止まった。裏を返せば、操作をミスるとすぐにスピンしてしまうということなので気を付けないといけない。
「現在位置は?」
『計算中......ミアトライン星系の近くです』
「よし。そこの第一コロニーに向かおう」
『了解いたしました。目的地を設定......到着まで、四時間です』
「早速出発しよう」
俺はスロットルを後ろに引く。船が新たな出会いへと加速し始めた。
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