第3話
多くのギャラリーがいる中、俺の
ハイパードライブを起動し、目的地をサイラスに示された地点に設定する。
3......2......1......
コンソールに表示されるカウントダウンが進み、一瞬
ハイパースペースに入って数十秒後、船内にアラームが鳴り響く。エラー項目はハイパースペース内オートパイロット異常。かなりまずい状況だ。
最悪の場合、宇宙を永遠と漂流する羽目になる。なにせ、星系と星系の間は何光年も離れているのだ。ハイパースペースをマニュアルで操作して星系にたどり着くのは、かなり難しい。
俺は外部カメラを起動し、周囲の状況を確かめる。そして、ハイパースペースに生じた巨大な渦を目撃した。
––––たぶん、あれに引き寄せられている。
そう直感した俺は、艦内の余計な機能を全部切ってシールドを起動し、エンジンをマニュアルで動かす。航路からは外れるが、きちんと距離を計算しておけば、戻れる......はずだ。多分。
......しかし、無情にもじりじりと船は渦のほうに引き寄せられていく。
「す〜ふう〜」
俺はスロットルを握りつつ、深呼吸をして心を落ち着かせる。そして......
「よし」
決意を固めると、船頭を渦のほうに向けて、成り行きに任せることにした。何が起こってもいいように、シールドをマックスに上げて、慣性制御装置を予備も含めて起動する。
そして、渦を抜けて数秒後。
「......は?」
しかもハビタブルゾーンにあるようで、緑に覆われた惑星だ。
俺は数秒ぼーっと眺めていたが、慌てて船をコントロールしようと試みる。しかし、ダメだった。慣性制御装置が働いているからわからなかったが、船が高速でスピンしている。
しかも、上下左右それぞれに、である。
俺はスラスターを駆使してどうにか状況を改善しようとするが、運の悪いことに惑星の重力に引かれて大気圏に落ちていっていた。
こうなってしまってはどうしようもない。外部カメラが次第に真っ赤に染まり始めた。大気圏内の物質とシールドが干渉しているのだ。
急激にシールドの耐久が摩擦によって減り始める。シールドの制御装置と連動して、シールドもスピンしてしまっているのだ。そのせいで、シールドにかかる負荷がとんでもないことになっている。
あっという間にシールドが壊れ、外壁と大気が接触を始める。
そして––––
《全スラスター故障》
無情にも、コンソールにそんな表示が出た。
スラスターがなければ、この船は姿勢を制御する術を失う。つまり......詰みだ。
俺は目を瞑り、最後の手段を使うことにする。自分で用意した幾つものセキュリュティを抜け、目的のシステムを起動した。
ばしゅ!
そんな音を立ててコックピッドが船と分離した。
カメラに乗組員を失った長年の相棒が写る。相棒はしばらくは耐えていたが、やがてといろんなところから裂け目が入って砕けて落ちていった。
生存できるようにシステムを整えて落ちるがままに任せ、天井を仰いだ。
初めて船を買い替えた時のあの感動。
自分用のカスタマイズを考える楽しさ。
いろんな思い出がフラッシュバックして、涙が出てきた。俺は涙を吹き飛ばし、きっとモニターを睨む。今は生き残らなければ。
一時間ほどもかからずに、コックピッドは地面へと着地した。
ンソールを操作し、大気の組成を調べる。
窒素75%、酸素22%、水蒸気2%、二酸化炭素0.01%。まあ、問題はなさそうだ。
俺は一応ヘルメットをかぶり、剣とパーソナルデバイスを持っていることを確認してから、コックピッドを開いた。
外に出て、周りを確かめる。そして、すぐ目の前に大きな壁があることに気づいた。比喩表現ではなく、言葉通りの壁だ。緑色をしていて、表面がざらついているようだ。
俺はためしに触れてみる。すると、ぶちゅっという嫌な音がして指が沈み込んだ。慌てて引き戻し、指を確かめる。
––––どうやら溶けていない。
まあ、溶けたところで戻れさえすれば、再生治療でいくらでも再生できるが......できれば、痛い体験はしたくはない。俺はそれを確認して、付近の硬い植物の破片で緑色の何かをこそぎ落としていく。
10センチほどの厚みを持ったその層を排除していくと、明らかに人工の(人族が作ったかはどうかは不明だが)金属の壁が現れた。
大量に入れたパーソナルデバイスのアプリの一つを起動し、壁に近づける。
––––テアミカド合金......古代文明の遺産に使われていることがある。現在でもその製法は不明である––––
俺はちらりとお守りを見る。なるほど、因果を引き寄せると言うのはこう言う意味だったのか......
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