第1話「だって、友達だから!」

 その少女は自分の名前をチタと言った。

 よくよく見てみれば、チタはすごく美少女だった。愛らしい目に整った顔立ち、局所的に(どことは言わないが)体が貧相な部分があるが、おそらく女子の理想の体型を維持している。年齢は俺より2つ下。つまり中学3年生にあたる。

 チタが、「事情は後で聞きますからとりあえずうちに来てください」と言ったので、断る理由もないのでついていくことにした。


「なぁ、ここには魔王っているのか?」


 俺は単純に気になったことを聞いてみる。


 前世の俺を知るものは今ここにはラチしかいないから変に恥ずかしがる必要もない。

 自分に自信がないのには変わりがないが、少なくとも今ここに住んでる人達には関係のないことだ。


「魔王…とゆうよりか、悪?の存在ですかね」


 俺とラチとチタは、チタの家までの道路を歩きながら会話をする。


「悪?」

「そうですね…国を裏から操っている人達、と言った方がわかりやすいでしょうか?」

「なるほどねぇ…ちなみにそいつらは強いの?」

「強いなんてもんじゃありません。昔、その人たちを倒すために組織された部隊がありました。その部隊の名前はエベルブロークス。各国が協力し作り上げたエリート集団です。ですが、エベルの隊員達はたった1人のラビスに倒されてしまったのです」

「ラビス?」

「はい。ラビスは裏で動いてる人達のことを言います」

「組織じゃないのか?」

「はい。一人一人が個人で動いてるんです」

「マジかよ……そんなバケモンがいるのかよ……」


(この世界の頂点獲れんじゃね?とか思ってたけど無理かもしれない…)


 話を聞く限り俺はこの世界には場違いらしい。帰ろうかな?


「そうか…それならそいつらが表立って国を牛耳ればいいものを、何でそんな回りくどいことをするんだ?」


 俺が前世に帰ろうかと考えているとラチが口を開いた。


「それはあまりわかってないんです。各国もいつラビス達が国を乗っ取りに来るか、といつも震えているんです」

「絶対関わりたくねぇな……」

「響哉‥‥お前って奴は………」


 若干ラチに呆れられた気がするが気のせいだろう。


♢♢♢


「着きましたよ、ここが私の家です」

「へぇ〜……」

「なんですかその見定めるような目は」

「へぇ〜……」

「ラチさん、この人ぶっ飛ばしてください」

「おい、お前可愛い見た目してとんでもないこと言うな」

「へ?か…」

「響哉、お前前世でも人と関係持ってたらすごいことしてそうだな……」

「???」

「き…響哉さん…私チタって言います」

「それはさっき聞いたけど??」

「はぁ〜…響哉、お前前世でも人と関係持ってたらすごいことしてそうだな……」

「???」

「だ……だから!ち……チタって呼んでください!」

「あぁ、そゆこと?気づいてあげられなくてごめんねチタ」

「あ………い…いえ……」

「はぁぁぁ〜〜……響哉、お前前世でも……(以下略)」


 マジでラチが意味不明だがとりあえず異世界1人目の友達ができた。


♢♢♢


 ひとまず家の中に上げてもらったが両親の姿が見当たらない。


「お父さんお母さんはお出かけ中か?」

「……いえ、父と母は3年前に世界で最強と呼ばれているラビスにこの街が襲われた時に死んでしまったんです……」

「そう…なのか……ごめんな変なこと聞いて」

「いえ、大丈夫です。もう心の傷もだいぶ癒えてきたので…」


 だが、そう言うチタの横顔はすごく寂しさを纏っているように見えた。


 その時俺は、もうこんな悲しい顔をする人がいなくなるように心から思ったのだ。


「俺、やるわ。そのラビスって奴ら全員ぶっ倒すわ」

「え?でも、相手は世界で一番強い奴なんですよ?」

「大丈夫、俺が一番になるから。しかも、復讐もしたいしな」

「だ…誰のですか?」

「チタのだよ」

「で…でもなんで……?」


 そこで俺はあえてとびっきりの笑顔でこう言うのだった。


「だって、友達だから!」

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イマジナリーフレンド作りを極めたぼっちは異世界行って無双します 千葉恭太 @AkuA_poor_08

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