イマジナリーフレンド作りを極めたぼっちは異世界行って無双します

千葉恭太

プロローグ

 この俺、鹿央響哉ぼっちだ。高校生活は2年目に入るが、友達は1人としていない。別にコミニケーションが取れないわけじゃない。ただ、自分自身に自信がないだけなのだ。

 でも、こんな俺を全て受け止めてくれる親友が頭の中にいる。いわゆるイマジナリーフレンドとゆうやつだ。

 だいたい、イマジナリーフレンドがいるということは認識していない人がほとんどだから俺のは少し違うのかもしれない。

 俺はそいつとは家でしか話さないし、他のみんなにはもちろん見えていない。だけど、そいつは確かに生きているのだ。

 しっかりとコミニケーションをとることができるし、俺のことを守ってくれる時もある。相手に直接攻撃などをすることはできないが、実際そいつと出会ってからは俺に危害が加わったことは一度もない。もちろん物に触れることはできないわけだが、そいつには何か特別な力を感じるんだ。


 そいつの名前はラチ。


 170センチある俺より20センチほど背が高く、がたいも良い。歳は俺と同じくらいだが、俺よりよっぽど貫禄がある。


 ラチの存在は誰にも言ったことがない。家では常に1人だし、かと言って学校に友達がいるわけでもない。

 友達を作りたくないと言えば嘘になる。ただ、自分に自信が無さすぎて話しかける気も失せるのだ。


「はぁ〜、いっそ異世界にでも転生したらリセットできて友達を作れるのになぁ…」

『響哉は異世界に行きたいのか?』

「別に行きたいってわけじゃないんだけど、行ったら行ったで別にいいかなぁって」

『つまり異世界に行っても問題はないと?』

「そゆこと〜」


 俺以外誰もいない家でいつも通りラチと話す。ラチは誰よりも俺のことを知ってるし、俺も誰よりもラチのことを知ってるつもりだ。


『響哉、ご飯買いに行かないか?そろそろお腹が空いてきた頃だろ?』

「さっすが〜、ラチわかってる〜」


 そう言い、俺らはコンビニに買い出しに行ったのであった。


♢♢♢


「結構買ったな」

『そうだな』


 コンビニからでて、比較的人通りの少ない場所で誰もいないことを確認してからラチに話しかける。

 車の通りも少ないので後ろを確認せず道を渡ろうとしたその時、


『響哉!あぶないっ!!』

「え?」



 ききぃーー!!どごっっ!!!



 車のライトに照らされた、とわかった瞬間そんな音と共に俺の体に重い衝撃が走った。


「かはっ!…う…うぅ……」

『だ…大丈夫か響哉!』


 体が重い、熱い、そして寒い、瞼がおもく、手にはどろどろとした液体が付いてるのが分かる。


(どんだけ激しいぶつかり方したんだよ…あぁ、もうダメかもしれねぇな…)


『響哉!響哉!』

「ラ…チ……あり…がと……な……」

『おい、そんなこと言うなよ!』

「い…せか…い…いきた…かった…な……」

『い…異世界…?』

「ガハッ、う…うぅ…」

『お…おい!響哉!しっかりしろ!』

「げん…きで…な……」


 (友達の1人や2人作ってみたかったなぁ…あぁ、目も開けられなくなってきた。もうダメかもな…)


♢♢♢


 目を開けるとそこには桃源郷があった。

 緑に覆われた現実離れした場所で、葉と葉の間から降り注ぐ光はとても美しい。

 その光景に目を取られ、数十秒間言葉が出なかった。そしてやっと絞り出した言葉は、


「あぁ、ここが天国ってやつか…」


 おそらく誰もいない場所で仰向けになったまま独り言ちた。


『そうでもないみたいだぞ?』

「ひゃふぃっ!!」


 視界の上にラチが現れたと同時に声をかけてきて、どっから出たのかわからないような声が出てしまう。


『…今の声どっから出したんだ?』

「俺もわかんねぇ…てか、そうでもないってどゆこと?このシチュエーションで天国以外ある?……まさか、異世界とか???」


 車に轢かれ、おそらく死んだ後にくる美しい情景の場所といえば天国しかないだろう。

 だが、あるいは……


『そうだ。そのまさかだ』

「え?マジで!?…てか、なんでラチは知ってんの?」


 俺は思った疑問をそのままラチにぶつけた。


『ちょっと見回ってきたからな』

「へぇ〜……まぁいいや、余計なこと考えるのやめよ」


 いくら脳を酷使しようと、所詮は男子高校生の脳だ。辿り着けない答えはいくらでもある。


「で?異世界人はいた?」

『ここの人たちから見たら俺たちが異世界人なんだがな…まぁ、いるにはいた。だけど俺のことは誰も見えてなかったな」

「そこは現実とおんなじなんだなぁ…」

『そうだな。まぁ、探検してみるのもいいんじゃないか?』

「うん、そうするよ」


 そう思い、今まで仰向けになっていた地面から背中を離して森の中を歩き回ってみることにした。


♢♢♢


「な…なんもねぇー!!」


 数十分間歩き回ってみたが、驚くほどに何もない。

 強いて言えば景色が少し変わるだけ。


「え?ラチはさっきどうやって異世界人と会ったの?」

『街に出た』

「え〜と…どうやって街に出たのかな?」

『わからん』

「マジかよ…もしかして方向音痴?」

『知らん』

「え〜……どうする?」

『まかせる』

「お前意思ないのかよ…」


 若干ラチには呆れるが、まぁそこは今はいいや。

 とりあえず……


「お腹すいたぁぁあぁーーーーー!!!!」

『きゅ…急にどうしたんだよ響哉』

「いや、叫んだら誰か来るかなぁーって思って」

『だからといってなんで「お腹すいたー」なんだよ』

「今の率直な気分」

『お…おう、そ…そうか…』


 ラチが反応に困ってる気がするが主に気のせいだろう。うん、そうだ。そう言うことにしておこう。


「とりあえず草むらの中漁ったら何か出てくるかもしれないから見てくる」

『そんなんで出てきたらこんな苦労しない気がするんだけどなぁ……』

「あったぁぁぁああ!!」

『あるんかぁぁぁあい!!』


 ラチのツッコミが驚くほどスムーズだったのは置いておこう。

 出てきたのはめっちゃカッコいい見た目をしたハチマキみたいな機械みたいな物。

 

「………うん、なんだこれ?」


 マジで何かわからない。

 でもハチマキっぽいからとりあえず頭につけてみる。



 キュイーン⤵︎…………



「え?大丈夫なんこれ?」

「なんか最後音下がってったな、わからないけど持っておいて損はないだろう」

「いや、もしかしたら魔王呼び込むやつかもしれんし……」

「………まぁ、その時はその時だ」

「こわいなぁ……」


 冗談抜きでほんとに怖いが、もしかしたらめっちゃレア物かもしれない。一応とっておこう。


「……あの〜……」

「え?」


 そんなこんなしていると、大きな籠を抱えた少女が木の影からこちらを窺っている。

 おそらくさっきの俺の声に反応して来たんだろう。


「も…もしかして!異世界の方!?」

「い……異世界……?」

「ここの人にとっては異世界じゃないだろ?聞くならここら辺に住んでる人ですか?とか聞きなよ」


 たしかにな、少し興奮しすぎたようだ。


「まぁ、ここら辺には住んでますが…それがなにか?」

「マジで!案内してもらおっかなぁ〜」

「ここら辺に住んでるわけじゃないんですか?言われてみれば確かに衣服も少し違いますし……」


 そこで俺は一つ違和感を感じた。その違和感の正体は俺の前に姿を現していない。

 俺は必死に頭を回転させた。


「………っ!!そうか!そう言うことか!」

「どうしたんだ?響哉?」

「響哉さんって言うんですね、素敵な名前です」

「ほら、やっぱそうだ。お前なんでラチのことが見えてるんだよ」

「「え?」」


 違和感の正体は、俺にしか見えてないはずのラチが話したことに対してこの少女が反応していたことだった。

 俺が投げかけた問いに対して少女はハッとした表情でこちらをしっかりと見つめてくる。


「……っ!!も…もしかして!この方はあなたの頭の中に存在していた方なのですか!?」

「そうだ。よくわかったな」

「よくもなにも…あなたが今頭につけているものは頭の中で思い描いたものが現実世界に現れる機械なんです!」

「は…?」

「そ…そんなすごい機械があるのか…」


 これには流石のラチも動揺を隠せないようだ。

 そこで、ふと思ったことを口にする。


「でも、そんな機械があったら世界の秩序とか乱れちまうんじゃないのか?」

「これはそんな便利な代物ではないのです。2年前に発売されたこの"脳内空想出力装置"、通称BIOPM[ビオプム]は、発売当初チート武器だ!って有名になったのですが、これが相当緻密にイメージしないと現実には現れなかったんです。実際、現実に表すことができた人は世界中で2、3人でしたし、それもぶどうなどの小さな食べ物だけでした」


 この話によるとこのビオプムってのは不良品にあたる物だったらしい。


(え?ちょっと待てよ?とゆうことは……)


「もしかして俺すごいことやっちゃってる?」

「はい。そう言うことになります」

「マジかよ……俺異世界だったら頂点獲れんじゃね?」




 そう、これは俺が転生先の異世界で頂点を目指して無双する物語だ。

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