三話 未来のラッキートレイン

 「合い言葉はラッキートレイン!」

 明日美あすみがいきなりそう叫んで自分のスマホ(に見える、未来のデバイス)をいじりはじめた。この超未来の神並かみなりロボットが『どっか変!』なのはもうわかっているけど、やっぱり、気になる。明日美のいじっているスマホ画面をのぞきながら尋ねてみた。

 「なにしてるの? ラッキートレインとか何のこと?」

 「未来世界では定番のアプリよ」

 「アプリ?」

 「そう。自分で『ラッキー!』って思えたことがあったときに、そのラッキー度に応じて課金するの。そのお金は助けを必要とする人たちのために使われる。その人たちが『ラッキー!』って思えることがあったら今度は自分が課金して……そうやって、自分の幸運をどんどん送って、列車みたいにつながって、列車みたいにみんなで『世界の幸福』って言う目的地目指して進んでいこう。そういう趣旨のアプリよ」

 「へえ。何だか素敵そう……って、そんなに課金するの⁉」

 「もちろん。『あなたとの出会い』って言う最高のラッキーのためだもの」

 うっ……。そういうことを真顔で言われるとさすがに照れる。

 キッチンで電子レンジのタイマーが鳴った。

 「あっと、いけない。お料理、お料理」

 明日美はスマホを放り出してキッチンへとかけていく。あとにはスマホに見える超未来のデバイスだけが残された。

 「あ、あたしもちょっと、やっておこうかな……」

 幸い、明日美のスマホの使い方は知っている。『いざというときのために』って、明日美の方から教えてきたんだからね! あたしが勝手にいじったわけじゃないわよ!

 アプリを起動させ、金額を入力。

 「これぐらい? う~ん、でも、もうちょっと……これで……いや、もう少し……」

 「わあ、すごい金額」

 「わあっ!」

 いつ戻ってきていたのか、明日美があたしの後ろからスマホ画面をのぞき込んでいた。

 「こらっ! 他人のスマホののぞき見禁止!」

 「それ、あたしのスマホ」

 ……そうだった。

 「でも、嬉しいわ。日頃はツンツンしているくせに、あたしと出会えたことをそんなに幸運なことだと思っていたのね」

 「い、いや、それはその……」

 「じゃ、お互いの幸運が一致したところでもうひとつ、幸運を重ねちゃお」

 「へっ?」

 「今夜こそ一線を越えて……」

 「それはだめえっ!」

                   完


 

 

 

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