第2話

またある晩、私は眠りにつこうとずっとベッドで横になっていた。だが、やはり眠れず、布団を移動させ寝る場所を変えたり、ネファーにならって温かい飲み物を飲んだりしても効果を発揮しなかった。

「やあ、輝眠。こんばんは」

自室のピアノの横に布団を置いて寝、天井のシミを数えている最中にネファーが現れた。マジでこいつどっから湧いてくるんだ、、、

「こんばんは、ネファー」

「今日も眠れないのかい?だったら、、、」

ネファーは持っているカバンから四角く、薄いものを取り出した。

「?なんですか、それ?」

私の問いに、彼は自信満々に答える。

「絵本さ!今日はこれを読み聞かせてあげるよ」

私はそんな子供騙しで悩みが解決するのかと疑ったが、前回は彼のおかげで割とすんなり寝付けたし、一応信頼することにした。

「うん、寝る場所を変えたりホットココアを飲んだりして努力をしているみたいだね。だけどね、輝眠。眠れないのは君が悪いわけじゃない。それはたまたま本人の体質が悪かったり、その日何かしらの出来事があってストレスがかかったりと、仕方のない理由が多いんだ。だから覚えておいてくれ、君が責任を感じることではない、とね」

私はその言葉に、どこか安心感を覚えた。布団をいつも通り2段ベッドの下に移動させ、ベッドの外からネファーは絵本を読み聞かせる。

「むかーしむかーしあるところに、力自慢の木こりがいました。彼は村人の通行の邪魔になっている木を切り倒す仕事をして、お金を稼いでいました。木こりは村人のためになるその仕事に誇りを感じ、生き甲斐を覚えていました。しかしある日、木こりはいつも通り仕事をしていると、熊の親子と遭遇しました。木こりは構えましたが、その熊たちからはどこか諦めたような雰囲気を感じました。『どうしたのか』と木こりは熊に尋ねると、親熊はこう言いました。『最近樹木が減り森が狭くなって、暮らせる場所も狭くなってきたんです』。ここで木こりは思います。自分の誇りに思っていた仕事が誰かの日常を破壊していたと。木こりはそれに大きなショックを受けました。彼は熊の親子を逃し、その日、村の長の家を訪ね、直々にこう言いました。『木こりの仕事を減らせないか』。しかし、長は『ならこの村から出ていけ。村のためにならない人間はいらない』と言い捨てました。木こりは森の動物のために、村に抵抗しようと決心するのでした、、、」

何だか思ったより深い話だな、と思い、私の意識は徐々に薄くなっていくのだった。

翌日、自室の机には『絵本の続きはまた今度』と書かれた置き手紙が残されていた。

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