睡眠不足な輝眠の日常

ヘルニア

第1話

今日も今日とて寝付けない。いつも通りだが、それでもトイレまでの廊下から聞こえる家族のいびきで、どこかやるせない気持ちになる。一体この感情をどうやって抑えようか。ベッドで横になり、必死こいて眠ろうとした、その時、、、

「やあ、輝眠(かがみ)。僕はネファー・スリーピー。気軽にネファーとでも呼んでくれたまえ」

2段ベッドの下にいる私を、上から謎の小人のような男が覗き込んできたのだ。ちなみに上の段には元々姉がいたが、今は彼女が独り立ちしたので空いている状態だ。

「えっと、、、どなたです?」

「僕は君を穏やかな眠りに誘うために全宇宙睡眠協会から派遣されたエリートさ!じゃんじゃん頼ってくれて構わないよ!」

なんだか頭が混乱してきた。全宇宙?睡眠協会?なんのこっちゃ、、、

「と、とにかくお茶でもどうぞ、あ、椅子も出しますね」

私は自分でも驚くほど落ついた所作でネファーと自称した小人をもてなす。

「ああ、ありがとう。遠慮なくいただくよ」

「みんな寝静まっているので、あまり大きな音は出さないでくださいね。で、お話なんですが、、、」

「うん、突然だし輝眠も状況がよく分からないよね?簡単に説明すると、睡眠協会というのは全宇宙の眠れない人のために、様々な工夫で寝付けるように改善を促す組織さ。僕はその中のエリートなんだ!」

うん、さっぱり分からん。

「ちなみに僕は地球から13光年離れた惑星クーリンゲンからはるばるやって来たんだ。さあ、早速君を安眠へ導こうじゃないか!」

ネファーはポケットをまさぐり、銀色の缶を取り出して私に手渡す。

「とりあえずこれを飲んでくれ。ああ、中身はただのホットココアさ。多かったら残してもいいよ。残りは僕が飲もう」

「い、いえ。全部飲みます」

私は促されるままにココアを飲み干す。そうすると、幾分か眠気が増してきたように思えた。

「ありがとうございます、ネファー。私、また眠りに行きますね」

「うんうん、これからも君が眠れないときに来るから、大船に乗ったつもりでいなよ!」

その日から私の部屋には奇妙な存在、ネファー・スリーピーが訪れるようになるのだった。

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