DIVE

機体が振動し、ここが宇宙と星の内部の境目だとわかる。

シュミレーションで何度もやったがやはり恐怖を感じる。

俺はヘルメットの中で呼吸を荒くしながら思った。

大気圏の熱にやられ、途切れ途切れの無線から近くの同僚の泣き叫ぶ声が聞こえる。

嫌だとか、母親の名前を読んでいた。 

ああ、と思ったときにはそいつは大気圏の熱にやられ宇宙の塵になった。

俺はただモニター越しの向こうの青い大地をみる。

そうだ、あれは大地じゃない。

俺は学校での講義を思い出し、見ているものが海だと気がついた。

生まれ育ったコロニーでは人工の海と呼ばれるものがあったがそれは人が作った巨大な水槽にしかほかならない。 

海の巨大さに見とれそうになるが意識を戻し、機体が平行に保つようにグリップを強く握る。

教官の言葉が響く。

「死は油断したところにくる」

そうだ。

俺は歯を食いしばった。

ヒトという動物が宇宙に上がってからかなりの時間がすぎた。

コロニーを建設し、そこから枝が伸びるように宇宙を開拓した。

残念ながら昔のヒトが考えていたようなエイリアンなどはいなかった。

むしろこの星で過ごす奴らにとっては俺らがエイリアンで今はそのエイリアンとこの星の奴らは戦っている。

機体が、更に揺れセンサーが悲鳴を上げる。

『敵の砲撃!』

隊長の叫び声がイヤホンから聞こえる。

機体のモニターで地上から黄色く見える物が飛んでくる。

軍の訓練のとき一度だけ隣になった奴の機体が砲撃に当たり、オレンジ色に光るとそこだけ絵の具を塗ったように鮮やかになる。

無線から聞こえた叫び声と共に視界の端のところで閃光がはしる。

くそったれ。

俺を包む、コクピット内に警告音がけたたましく鳴り響く。

「わかってるよ、馬鹿野郎!」

俺は叫んだ。

近くの仲間が砲撃にやられ、打ち落とされた衝撃が更に機体を震わせる。

ヒトが宇宙に出て新たな資源を手に入れた。

『スターストーン』なんてよくわからないもの。

そんな物を取り合って何になるんだ。

俺は訳のわからん声を出し、期待の武装を解除した。

無線から声がきこえた。

『奴らのケツに弾をお見舞いしてやるぞ!』

隊長が一発、画面越しに見える青いところに向かって砲撃を開始した。

機体はさらに振動する。

震えるレバーを強く握って俺は銃口を向けた。

同時に青い惑星からの砲撃は一気に強まる。

流れ星のようなものが機体の横を無数に流れ去っていく。

気を抜けば俺もああなる。

冷や汗とともに手に力が入るのがわかる。

俺はレバーを強く握り、照準を目の前のオレンジ色の向こう、青い部分に向ける。

「おぁぁぁぁぁ!」

震える指先に力を込め、トリガーをひく。

待ってろ、もう少しで着く。

その時はお前らの顔を横から眺めてやる。

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