Rest in peace garlic

血吸坂吸太郎ちすいざかきゅうたろう

はヴァンパイアだ。

彼はドラキュラ伯爵の正統な血統であり、由緒正しきヴァンパイアだ。

その魔性さは色々な人を引き付け、普通の人間からすれば一見、カリスマがある人物に見える。

しかし、それはヴァンパイアの特性であり、一つの目的を果たすための手段。

目的とは彼にとってうまい血液をのむことだけ。

吸太郎にとって獲物を見つけたら逃さない。

ヴァンパイアとしても狩人としても一流。

彼は今宵も女性の血を吸い求めていた。

しかし、そんな彼は悩んでいた。

そう、目の前の女性だ。

彼女の名前は鮫島カリナ。

今回の血吸坂吸太郎のターゲットだ。

だが彼女は吸太郎にとって問題だった。

その問題とは彼女がにんにく好きということだった。



---「吸太郎さん、食べないの?」

「う、うん…。そ、そうだね」

吸太郎はカリナに返事をした。

目の前のブロッコリーのにんにく炒めをみて、反吐が出そうだった。

目の前の料理をみて、思った。

彼女は俺を殺しに来ているのか?

吸太郎はゴクリと唾をのみ、側にあったワイングラスを手に取り、口にした。

落ち着け俺。

吸太郎は自分に言い聞かしながらワインで口を潤す。

ヴァンパイアは伝承で銀の杭、十字架、等々、エトセトラ、弱点はある。

ただ銀の杭などはさされない限り死なないし、十字架はあまり意味もない。

ただにんにくは抗菌作用があり、それは吸太郎の一族にとっては完全な毒薬にとっても等しかった。

「早くしないと冷めちゃうよ」

カリナはワイングラスを手に言った。

いやいや、死んじゃうからさ。

吸太郎は叫び逃げたくなった。

しかし、目の前のカリナは平然とそれを食べながら吸太郎を見続ける。

そんなプレッシャーをかけられると困るな。

吸太郎は狼狽しつつ、涼しい顔をした。

人間でいえば早く毒を飲んでと言われているようなものだ。

吸太郎はカリナに言った。

「キノコがあまり苦手で」

「ごめんなさい。私、気が付かなかった」

カリナは申し訳ないと言った。

「そしたら別のメニューにしましょうか」

カリナは、そういうとメニュー表をとり、吸太郎に渡した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る