時空の少女
クロノスは十皇を各地へと転移させた後、自身も終域へと転移した。
転移場所は大陸中央部。
クロノスは空中に転移した後、浮遊し眼下を見下ろした。
そこにあるのは朽ちた遺跡。
その遺跡は聖地アストランデにも同じ物が存在する。
クロノスは降下すると音もなく遺跡の入り口に立つ。
そして迷うことなく遺跡の中へ中へと歩を進める。最奥部に辿り着くとそこには巨大な像が鎮座していた。
鎧に身を包み、剣を天に掲げた女神像。クロノスはその女神像に手を翳した。
すると女神像が音を立てて後ろへと移動していく。現れたのは地下へと続く階段だ。
クロノスは確かな足取りで地下へと進む。
気が遠くなるような数の階段を降りるとクロノスの目の前に石で作られた大扉が出現した。大扉には遺跡にあった女神像が描かれている。
クロノスは無言で扉を開き中へと入る。
「……だ……れ?」
中に入ると掠れた声がした。声の主は柱に張り付けにされていた。
その有様は無惨なもので、四肢に楔を打ち付けられ決して逃れられない様に鎖を巻かれている。
そんな少女は体に鎖を鳴らし、顔を上げた。
虚な瞳がクロノスを捉えるとみるみるうちに涙がたまっていった。
「……クロ……ノス……?」
「……ん」
「……どうし……て?」
「……この大陸から逃げた人間が私の担当する大陸に来た」
クロノスの言葉を聞くと、ついに涙が流れ落ちた。
「……ごめん……なさい。わたし……わたし!」
「……いい。……現状を教えて。こちらの王は?」
「みんな……みんな呑まれていた。気付いた時には手遅れだった」
「……わかった」
クロノスは言葉少なに頷くと、右手を少女は翳した。
クロノスの瞳に時計盤が現れる。すると少女を戒めていた鎖が朽ちた。まるで時を早送りしたかのように。
「……わたしと仲間たちでこの大陸を対処する。貴女は何かあった時のために回復につとめて」
「……わかった。ごめんなさい」
「……行ってホワイト。貴女の仕事は私たちが失敗した時の保険。頼りにしてる」
ホワイトと呼ばれた少女は身体を雪の様に変えて消えていった。
クロノスが朽ちた鎖へと視線を向ける。
……神封鎖。……こんな物用意できるなんて既に復活している? ……いやホワイトの定期報告は届いていた。……本当にそうなら偽装の必要はない。
クロノスが首を振って思考を払う。
「……まだ、間に合う」
クロノスの瞳に時計盤が浮かぶ。
……わたしは使命を果たすだけ。
そうしてクロノスは転移でどこかへと消えた。
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