人を見下す奴は人の上に立つな

 小学六年生の時も、生徒会選挙があった。


 美代子はぼやいていた。

「私がスピーチの原稿書けって言うんだよ。なんだそれー」

それもそうだな、と思いつつ、我が家のあるマンションに帰った。


 ベランダからボーッと景色を眺めていると、一学年下の男子グループが景色の中に紛れ込んできた。

すぐ近く、ベランダのすぐ下辺りに。

「あ、今度生徒会に立候補するって言う……」

と思っていたら、立候補する男子、島崎がこちらを見て、大声で言った。


「こっち見てる、キモー!!!無視しよーぜ!」

何かを大きく勘違いしてるなと思った。




 いよいよ、生徒会選挙の会が始まった。

島崎は自信満々、意気揚々とスピーチ原稿を読み上げた。


「僕は生徒一人一人のことを思い、この学校のこと思い、」

虫唾が走った。


 美代子が書いたと言う原稿を読みあげるだけの生徒もいた。

実によくできた、原稿だった。


 ただ、学業優秀と言うだけで、立候補している者たち。

学校のためとか言っているけど、本当かな? と疑ってかかってしまう。


 贔屓するので評判のタチの悪い先生に、贔屓されているタチの悪い生徒たち。

正直ロクなのがいないと思ったが、一応その中でもまともそうなのに入れることにした。




 いよいよ、投票用紙が配布されてきた。

スピーチ会場で投票するというシステムだ。


 そこで、隣の席の男子が話しかけてきた。


「なあ、糸石も、〇〇に入れてくれん? 会計は」

と言ったので、

「ああ、もう一人はあの島崎だったな」と思ったので、


「良いよ。島崎君のような人を見下す人は、人の上に立つとまずいと思うし」

とぼそっと言ったつもりが。


「糸石さん、島崎ってっ子は性格悪いの?」

「糸石がいうんなら間違いねぇよ。きっと性格悪いんだよ」


 会場中が、島崎は性格悪いと言う話題で、もちきりになってしまった。

島崎が壇上でバツの悪そうな顔をした。




 結果、島崎は過去最低の落選の仕方をした。

生徒を贔屓と差別をする担任に脅されて入れさせられた、島崎のクラスメイト以外の票が無い。


 見事なまでに、一票もない。


 それでも、島崎のような、人を下に見て、バカにする、嫌がらせするような生徒が生徒会に入るのはまずい、と言う感じだった。

もう一人の同じ役職の候補者にはそこまで悪い感じもなかったし、これでいいかと思った。




 後で、島崎の担任に、

「あんた、キモくて最低だね」

と言われたことで、余計にこの先生の推薦なら、島崎は落選して良かった、と思った。


 しかし、私の父には迷惑をかけてしまったらしい。

どうやら、島崎の父親が、その件で文句を言ったらしいのだ。


 なんか親子でロクでもないなと思った。

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